“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年4月2日

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自分たちのやりたいラグビーを
レフリーに摘まれないために

――チーム作りの最初の段階から反則数を減らし失点を抑える取り組みをしていたということですね。

平林:このような点に取り組んだのは世界でも日本代表が初めてのことでしょう。こういったことにもアンテナが立っていたエディーさんの戦略勝ちです。

 エディーさんは百戦錬磨の監督で、日本のHCになるまでW杯では一度しか負けたことがありませんでした。

 それは2003年第5回大会でオーストラリア代表監督として臨んだイングランドとの決勝戦です。それも、最後の最後にイングランドが放ったドロップゴールの3点が勝敗を決めました。ゲームの構造に沿って戦術を立てていくことに長けた人なので、こうした経験から3点の重みを誰よりも強く感じていたのでしょう。

――3点の重みを熟知したペナルティ対策としてはなにを?

平林:ルールとレフリー対策とゲームマネジメントのスキルアップです。ゲームはレフリーがマネジメントするものですが、これをチーム側からマネジメントしていこうというものです。それをリーダーミーティングや普段の練習のアクティビティの中で行っていきました。

 具体的にはレフリーとのコミュニケーションの取り方です。試合ではレフリーの立場は強く、レフリーをコントロールすることはできませんので試合中に大きなストレスになります。そのストレスをいかに感じないようにするかが重要になってきます。

(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 チームの中の数名のリーダーがレフリーへの窓口になって対応し、他の選手たちはコミュニケーションをリーダーにすべて任せるということです。ゲームでは自分たちのやりたいラグビーをやるために相手のやりたいラグビーをやらせないというのが勝つための鉄則なので、自分たちのやりたいラグビーをレフリーに摘まれてしまうと作戦が成り立たなくなってしまいます。

 日本はあくまで弱者の戦略なので奇襲作戦などの特殊性があるため、それをレフリーに摘まれないようにしなければ強みが生かせなくなってしまいます。その強みが消えないように試合前はもちろん、ゲームが始まってからは、レフリーに邪魔されないで理解してもらうようにコミュニケーションを図っていくというキャプテンやリーダーたちのリーダーシップ教育です。

 南アフリカ戦の分析も同様でしたが、レフリーの性格や経験値、育った国のバックグラウンドや文化的な要素など、それぞれのレフリーのジャッジにはいろいろなものが反映されています。それに対して日本人的な感性だけで押していっても理解されません。レフリングに文句を言っても溝は深まるばかりです。こちらがやりたいことを邪魔されないようにするためには、相手をある程度理解し、歩み寄り、相手にも歩み寄っていただかないといけません。

 極論すると「自分たちの未来を人に委ねてしまってよいのか」という考え方で、コントロールできるところはしっかりコントロールするということです。たとえコントロールできないまでも、チームで取り組んでいけばレフリーになんらかの形で良い影響を与えることができたり、試合を上手く運ぶことができるかもしれません。

 ワールドカップのような大会ではこうした点も勝負どころとなります。

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