“熱視線”ラグビーW杯2019の楽しみ方

2019年4月2日

»著者プロフィール

――名将エディー・ジョーンズさん率いるジャパンの4年間を振り返っていただき、一番学んだのはどんなことでしょうか?

 

平林:ジャパンの活動は一年間の中の2カ月間くらいです。その中で結果を残していくには、いかに短い時間の中で効率よく取り組むかということでした。それを学んだ4年間でした。よくメディアに取り上げられた「160日も拘束された」というのは最後の年だけです。

 その最後の年は、春の段階からワールドカップのシミュレーションをする時期に入っていたので、いろいろな試みは2014年シーズンまでに終えていました。

 エディーさんはオーストラリア人なので、日本でレガシーを残さなければいけないと思っていました。それは「人を育てる」ということです。アシスタントコーチやトレーナーや、僕もいて、それぞれが4年間でいろいろなことを学びました。

 また、日本人選手にとってもインターナショナルレベルの選手のような生活を送ったのは初めてのことでした。

 ウェールズやイタリアというティア1に勝利するという経験も初めてですし、その分、競争も激しかったので選手間でもいろいろありました。チームを作る過程でストーミングと呼ばれる嵐の中でもまれる段階が必要です。

 その嵐が過ぎれば必ず光が見えてきます。それが見えないときはパニックになってしまう選手もいますが、その見えていない時期も必要なのです。

 指導方針は選手に圧力をぐっとかけていって、圧をかけたあとに、自分たちで咀嚼する時間を与えて、その後に、ふっと抜いてあげる。このサイクルでエディーさんはやっていたのです。それを選手が知っている必要はありません。

 選手たちがどれくらいの圧に耐えられるのかを見ていたわけです。その圧の中で自分たちがどれだけ主体的にやり遂げる適性を持っているか、そこを見極めていたのです。

 そして最後は選手たちの美談で終わります。スタッフに表に出ようとしている人がいなかったことも大きいですね。チームはあくまでも選手が主体ですから。

 エディーさんはそういうマインドで取り組んでいました。

現ジャパンに期待することは?

――最後にお聞きします。今回大会のジェイミージャパンに期待することは?

平林:同じプールにアイルランドやスコットランド、サモアがいますので目標を達成する困難さはみんなが理解しています。ですが、エディージャパンの4年間と圧倒的に異なる点は、選手のスペックが国際レベルに達している段階からスタートできたことです。

 エディーさんが最初に選手選考したときは、誰も国際レベルに達していませんでした。だから、強化していく過程で育成するという段階が必要だったのです。3部練習、4部練習のように育成時間をプラスしなければならなかった理由はそこにあります。

 その結果、W杯でもグラウンドを広く大きく使うような戦術が使えず、グラウンドを狭く切って、エリアを細かく使いながらゲームを組み立てました。

 一方、現在のジャパンはスタート時点からすでに世界規格に達している選手たちがいたので、一人ひとりが強くなり、またスピードがありスペース感覚に優れた選手を擁しており、グラウンドを自在に使って攻撃できる選択肢を持っています。

 いろいろな形からトライが取れるようになってきているのが現在のジャパンの魅力であり楽しみにしているところです。

――今回はエディー・ジョーンズHCのもと4年間日本代表に携わった平林泰三さんにお話を伺う機会をいただきました。

平林さん、お忙しいなか貴重なお話をありがとうございました。今後ますますのご活躍を祈念しております。
 

<平林泰三さん>
2006年に日本及びアジア人初となるフルタイム(プロ)レフリーとなり、北半球の最高峰シックスネイションズやニュージーランドとオーストラリアの対抗戦ブレディースローカップ、ワールドセブンズシリーズやセブンズのワールドカップなど数百試合でレフリーを務め、2007年には『Newsweek』誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選出された。
また2007年からラグビー日本代表のバックルームスタッフとしてゲームやレフリー分析などに尽力し、2015年W杯イングランド大会では、世界ランク3位の南アフリカ代表から劇的勝利を収めることにも貢献。
現在はエディージャパンで培ったスポーツインテリジェンスを確立したコーチングプログラム「ゲームアウェアネスプログラム」を開発し、ラグビー以外の競技団体にも活躍の場を広げ積極的に指導を行っている。また4月よりラグビーの指導者や選手を対象にしたオンラインサロン「平林泰三のラグビー部屋」も開始。


  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る