2022年12月5日(月)

Washington Files

2019年4月15日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 米ブルームバーグ通信は2月27日付けの解説記事で「クリントン大統領は1999年の危機回避で死活的に重要な役割を果たしたが、朝令暮改のトランプ政権に同様の指導力を発揮できる能力があるのかどうかを試す時が来ている」「パキスタン軍は通常戦力面での歴然たる劣勢をカバーするため、交戦となった場合、緒戦での核兵器使用を重視しているとされるだけに、今こそアメリカ外交力の真価が問われている」などと論じた。

 ワシントン・ポスト紙も3月5日掲載のゲスト・コラムで、相互に確証破壊力(mutually assured destruction=MAD)を保有することによって抑止力が機能するとする伝統的な理論に触れる一方、「相手国が破滅的な結果に至ることを恐れ報復に至らないとの判断の下に、できるだけ早い段階で核先制使用により敵に圧勝することによって、全面戦争を回避できる、とのシナリオもありうる」との核管理問題専門学者の見方を紹介、「為政者がエスカレーション・リスクを誤算することでより危険な状況を生み出す」と警鐘を鳴らしている。

朝鮮半島にもあてはまる深刻な問題

 南アジアにおける核戦争勃発の懸念は実は、独裁体制下の北朝鮮が核を保有する朝鮮半島にもあてはまる深刻な問題だ。もし、韓国が将来、対抗上、核武装に踏み切り、印パ対立と同様の緊迫した事態となった場合、一衣帯水のわが国にとっても存亡にかかわる重大事にもなりかねない。

 超大国であれ途上国であれ、指導者をこうした「誤算」による“危険な誘惑”から遠ざけるためには、国際社会が普段から、核管理体制の徹底と究極的な核廃絶に向けて世界各国における世論を声を大にして喚起し、監視の目を光らせていくしかない。この点でとくに、広島、長崎被爆という地獄図のような悲惨な結果を身をもって経験した日本の果たすべき役割は、より一層重くなっている。       

  
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