閉鎖的で国内のことしか考えていないと指摘された網民たちが呉建民への批判を展開したのは言うまでもない。この議論を見てもスクールバス問題が中国社会の各界を揺るがしていることが分かると言えよう。
10年で半減した農村小学校
なぜここまで中国政府は、子供に対する「思いやり」に欠如しているのだろうか。もともと政府には、子供の教育をどうするのか、という政策の位置づけがあまりにも低いと言わざるを得ない。
温家宝首相は、11月27日に開いた「全国婦女児童工作会議」で、迅速に「校車安全条例」を制定するよう指示したが、遅きに失した感は否めない。
幹部養成学校「中央党校」機関紙・学習時報(12月5日付)によると、2000~09年に農村で小学校の数は52万1468校から26万3821校に、49.4%も減少した。つまり農村の小学校は10年間で半減した。統廃合したケースが多いのだが、その分、子供たちは遠くの学校まで通わなくてはならなくなった。つまりスクールバスをさらに充実する必要があるにもかかわらず、それを怠っているのだ。
学習時報は「こんにちの中国において、スクールバスをどうするかは、国家・社会共通の一大問題となっている」と訴えている。
中国では未成年者に対する権益保護観念が希薄というのは今に始まったことにないというのが中国紙・第一財経日報(11月18日付)の論調だ。
「古くから今に至るまで、未成年者は父母や家庭の『私産』、つまり本質的に家庭の所有物であり、政府が未成年者の権益を保護するという立場は明確ではなかった。1991年に採択され06年に改正された未成年者保護法では家庭での保護が最優先され、続いて学校での保護、さらに社会の保護などと続いた」。
経済成長ため民衆が犠牲に
一方、国家制度の問題に目を向けたのは中国週刊紙・経済観察報(11月21日付)だ。
「自分たちの民族の未来をいかに守るか、ということに関してわれわれは制度面での誠意に欠けている」と提起したのだ。
同紙は、経済成長がまだ本格化していない1955年の日本で、栄養満点の給食制度が始まったことを挙げ、80年に日本の青少年の平均身長は55年と比べて10センチ以上も高くなったと紹介。「日本民族から『小日本』のレッテルははぎ取られた」と指摘した。
一方の中国はどうか。同紙は「経済は30年近く高度成長を続けており、政府財政の実力は日に日に強力となり、『中国モデル』は光を放つが、遺憾なことに教育や子供に対する資金投入は経済成長の歩調と同じではない」と懸念を示した。
中国誌『中国新聞週刊』(11月28日)はさらに手厳しい。