「宇宙船」「公用車」よりもスクールバスを!
スクールバスの安全問題は確かに甘粛省など西部の農村地域で深刻だ。しかし北京でも「6席しかない車両に37人の園児が詰め込まれていた」(新京報)と伝えられ、全国中で横行している暗黙の問題であった。中国の網民(インターネット利用者)の間では、批判の矛先は政府に向いている。
まずやり玉に挙がったのは「宇宙船」と「幹部公用車」だ。
甘粛での事故が起こった際、まさに宇宙でのドッキング実験を終えた無人宇宙船「神舟8号」が飛行中で、事故翌日に帰還を果たした。ミニブログ「微博」では「多くの神舟を発射するのに1台のスクールバスも買えないのか」との書き込みが相次いだ。
このほかにも「公費天国・中国」に照準を当てた書き込みは絶え間なく続いた。
「1年で2000億元近い公費飲食、3000億~4000億元の公用車支出、2000億元の公費海外視察」(中国紙・経済観察報)とされる中国。どうしてこの金をスクールバスに回せないのか、という怒りの声がネットやメディアで噴出している。
ドイツ高級車アウディなどが幅を利かせる「特権公用車」だが、政府はちょうど事故発生直後、一般公用車の基準として1800cc以下、18万元以下とすることを盛り込んだ「党・政府機関公用車管理細則」を策定したが、特権高級公用車への庶民の批判を意識した動きと言えた。
中国の外務省は「援助交際部」
次にやり玉に挙がったのは、中国外務省が、東欧マケドニアに豪華なスクールバス23台を寄贈したと発表したことだ。
同省報道官は「(2008年の)四川大地震の際にマケドニア政府は中国に援助してくれた。援助は相互に行ったものだ」と弁解するが、網民はこのニュースにも噛みついた。
「外国の子供は笑っているが、中国の子供は泣いている。『外交部』(外務省)は名称を『援交(援助交際)部』に変えるべきだ」。
マケドニアへのバス寄贈は、事故9日後の25日に行われたが、あまりにも民意に無頓着な官僚的対応だと批判したのが、中国共産党機関紙・人民日報系列の中国紙・環球時報(28日付)。「世論の『あら探し』に政府は積極的な適応が必要だ」。政府のネット対応のお粗末さを指摘した。
一方、フランス大使や外交学院院長を歴任した呉建民氏は京華時報(12月5日付)で、スクールバス寄贈をめぐりネットなどで盛り上がる論争について「あなたが困難であれば、私はあなたを助ける。これは国と国との平等かつ互恵の関係で、貧しいとか豊かとかいう問題ではない」と苦言を呈した上で、こうした論争がわれわれの国民意識と関係があると断言したのだ。
「われわれは国の門を開いて30年あまり。長期にわたる弱国状態が一種の弱国意識を形成し、長期的な鎖国が一種の閉鎖的な意識を構築したのだ」。