公正取引委員会が9月30日にとりまとめた「下請取引等改善協力委員から寄せられた主な意見について」には下請取引等についてどのような影響が出ているか、又はどのような予想がなされるかについてまとめられている。その中には「食料品メーカーや卸売業者としては、放射能の問題を受けて、今後、消費者の安全・安心 を名目として、小売業者からいろいろな要請を受けることを懸念している。」との意見が寄せられている。
暫定規制値の信頼性を下げることに
事業者の各種取り組みは評価されるべきだが、自主基準の設定などを行う中で暫定規制値に対して「いい加減なもの」「信用できないもの」として悪いイメージを植え付けたりする結果になっていないだろうか。たしかに、現在は暫定規制値より低い基準での運用も可能なレベルになっている。そのため、暫定規制値が「高すぎる」印象も生じるのだろう。
しかし、それはあくまで結果論であり、原発事故の推移次第ではさらに深刻な汚染が生じていたことも十分考えられた。3月の時点では妥当なものだったと言えないだろうか。暫定規制値に対して他国の基準との比較や数値引き下げを求める声は早くから耳にしていた。しかし、暫定規制値についての理解や、欧州の基準がチェルノブイリの事故後、段階的に規制値が引き下げられて現在に至っていることなどの説明が十分になされてきたかについては疑問が残る。その結果、食品供給への信頼を毀損してきたように思える。そのことがさらに過剰な対策を取らざるを得ない負のスパイラルを招いていないだろうか。
現在、厚生労働省が暫定規制値の見直しを進めているが、数値の見直しにとどまることなく、放射性物質への対策が健康リスクの低減やコストの観点から消費者・事業者双方の理解が得られるようリスクコミュニケーションもしっかり行ってほしい。
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