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2019年5月21日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

社内風土に変化

 キリンが京谷さんに「本麒麟」のマーケティングを任せたのには伏線があった。新ジャンルで05年に発売した「のどごし<生>」のブランドの新商品「のどごし スペシャルタイム」の商品開発を17年に担当した実績があった。

 ビールの若者離れが指摘されて久しいだけに、キリンの経営陣は若手を活用してビール離れのトレンドを何とか歯止めをかけなければならないと思っていた。この数年、キリンの社内風土は、大手外食チェーンを担当する営業部門やマーケティング部門、企画部門など、これまではある程度キャリアを積んでから配属される部署に若手社員が積極的に起用されるなど変化してきている。

 その成功事例の一つが「本麒麟」だった言えるが、成功事例に安住すると失敗するとも言われるだけに、このヒットが続く保証はない。

 ビールというライバルとの差別化が難しい商品で、ヒットにつなげるのは相当のプレッシャーになったはずだ。「この商品が売れるかどうか発売前は非常に緊張して、『本麒麟』の赤いパッケージが夢にまで出てくるほどだった。いまはヒットしたのでホッとしていると同時に、さらにリニューアルしたおいしさを届けていきたい」と話す。

生かされたビール愛の感性

 「ビールは全人類を幸せにできる」と断言するその自信は相当なもので、「ビール愛に関しては私が一番」と笑う。「本麒麟」の開発では、「ラガービール」と同じホップを使い、アルコール比率を6%と高めにして「力強いコク」と「飲みごたえ」にこだわった。

 製造方法は長期低温熟成を採用することで、当社の新ジャンルのものより熟成期間を1.5倍長くすることで、思い通りの商品ができた。ビールに関して誰にも負けない感性を持っている京谷さんの経験と能力が生かされた結果とも言える。

 「本麒麟」というネーミングは当初から圧倒的な支持を集めて、採用することに迷いはなかったそうで、「第3のビール」のシェアを本気で取りに行くという意味も込められており、満足しているという。

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