今のペットブームは約10年前から続いており、矢野経済研究所の調査によると、昨年の業界全体の市場規模は1兆3794億円でした(http://www.yano.co.jp/press/press.php/000830)。しかし最近では他の業種同様不景気の波に飲み込まれ、店舗によっては前年比50%減というところもあるようです。売上が減ったのは生体・洋服・フード・おやつなどの物販が主で、顧客の懐具合に余裕がなくなってきたことが原因と言われています。トリミングやホテルなどのサービスはそれほど影響されていないようですが、最近好調なのはペットシッターと言われています。老犬・老猫が増え、飼い主が旅行の時など慣れている自宅でのお世話や、飼い主の高齢化により散歩や通院などの代行に需要があるようです。
このような事情から、生体販売や物販を縮小し、サービスに力を入れようと変革を試みるショップが増えています。業界のこのような変革は現在の日本のペット事情からも大変喜ばしいことだと考えます。
提携病院以外保証しない?
生体販売をしているショップに入ると未だに“生命保証制度付き”という言葉に出会うことがあります。ペットブームの初期に考えられた制度で、購入した価格の15%程度を支払うと、購入から一定期間内にその仔が死亡した場合、同種同色の仔と交換しますというものです。
この制度が作られた経緯は、“あるお店で販売した生体の7頭に一頭が何らかの理由で死亡するという統計が出た。15%×7頭=105%なので、1頭無料で交換しても8頭分の売り上げが立つ”ということで作られた仕組みだそうで、昔私がいたショップでも導入していました。ある時このような状況で購入した愛犬を亡くした飼い主が制度を不服に思い提訴したところ、法改正でただの“物”だったペットが“命ある物”と言う解釈に変わった直後で、かかった金額全てを取り戻したという事例があり、制度自体成り立たなくなってしまいました。しかし、驚いたことにいまだにこの制度を取り入れているお店があるようです。
実はこの制度にはさらに裏があり、私がこの文言を見たショップでは、“体調に変化があった場合お店指定の提携病院で診察・治療を行い、死亡した場合に初めて実行される”ということも書かれていました。それ以外は認めないし実行しないという内容でした。このお店は東京都内でしたが、指定病院は遠い他県の住所で緊急時に使うにはとても現実的ではありません。つまり実質的には“買ってすぐ死んでしまってもクレームは一切受けません”の意味だったのでしょう。現実的に命を保証することは神様しかできないだろうし、「生命保証制度があるから安心」ということには決してなりません。
次回は、動愛法改正で話題の「8週齢規制問題」や飼い主のモラルについて触れていきます。(第4回につづく)
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