2024年4月20日(土)

<短期連載>ペット業界の舞台裏

2011年12月22日

 「思っていたより大変だった」「流行りが過ぎたので」「頭が悪いから」「他の仔より大きくなったから」「大家さんに見つかったから」。信じられないような内容ですが、ある動物愛護センターの担当者から聞いた処分を依頼する理由の一部です。販売時に説明することで救われたはずの命があるのです。

売れ残りペットはどこへ行く?

 とはいえ、たくさんの生体を扱っていると当然売れ残ってしまう仔も出てきます。価格を下げたり、売上の良い他店舗へ回したり、セールの目玉にしたりと販売努力の結果ほとんどの仔は何とか売れてしまうものですが、それでも残った仔はどうなってしまうのでしょうか? 

 例えばスタッフの家族になる仔もいます。長く世話をしていると情が移ってしまうもので、そんな仔を抱え込んでしまうショップスタッフが多くいます。お店側も「維持費がかかるよりも」と希望者に無償で譲ることが多いようです。例えば常連のお客さん。こちらも長く売れ残っているのを見ていると、気の毒に感じて育ててくれる方がいます。繁殖を行っている店舗の場合、繁殖用に使う場合もあります。その仔にかかった経費を生まれてくる子犬・子猫の売上で取り戻すことが出来ます。多くの店舗ではこれらのような方法で命を繋ぐ努力をしています。

 しかし一部の業者では無情にも“処分”してしまうケースがあります。それも一番安上がりな方法で。素人を装い拾得物として愛護センターへ連れて行く。郊外の山林に繋いで遺棄。さらに許せないのは、箱に入れたまま放置。袋に入れ冷蔵庫へ。そんな業者も存在します。残念ながら利用する側が店の品位や内情を確認して利用するのは難しいことです。これから新しい家族を迎えようとするのなら、少なくても育てようとする生き物のことを少し勉強して下さい。そして可能であれば動物との生活を体験して下さい。それから迎え入れても遅くはないはずです。人間の子供を育てる時もマニュアルはありません、育児書通りには育たないものです。そして準備が出来たならばブリーダーやショップを訪れて疑問点を質問してみて下さい。納得のいく説明が聞けたならきっとそこが良いお店です。少なくとも衝動買いを勧めることはないでしょう。

オスよりもメスの方が高く売れる

 お店を訪ねると、気になるのが生体の価格ですが、実は季節や流行で価格が決まります。同じ犬種・犬質であれば雄は雌よりも2~3割安い価格に設定します。住宅事情や雄特有のマーキングがあるためで雌の方が好まれるという業界の常識からです。面白いことに、純血種と言われる犬や猫の価格は約30年前からほぼ変わっていません。生体市場(オークション)などなかった時代、生体の仕入れは専門誌の広告や仲間内の情報を頼りに全国を巡り集めるという手法でした。当然価格も高価で、生活に余裕のある顧客がターゲットでした。クレジットカードで購入できるようになり、流通も整備され価格も比較的安くなり現在に至りますが、この頃から犬や猫が一般的なペットとして人気になってきました。

 犬猫は儲かると思っている方が多いようですが、儲かるのは前述の通りですが仕入れてすぐに販売出来た時のみです。仕入れ価格は飲食店と同じ程度、3割位が理想です。もちろんお店によっても、種によってもまちまちですが、人気の犬猫は5割以上になることも珍しくはありません。極端に高くても買い手はつきませんのでバランスが大切なのは他の業種と同じです。ボリュームとして見ると単価が高いので儲かるように見えるのでしょうが、手間や労力、品質が安定しないなど特有の条件がありますので総合してみると難しい商材だと言えるのではないでしょうか。一部に、思い切り稼ぐ方法もあるようですが命をないがしろにする内容ですので、今回はあえて話題から外そうと思います。


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