中東を読み解く

2019年6月4日

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ヨルダンに強いるパレスチナ連邦国家

 クシュナー氏は会議の根回しのため最近、グリーンブラット米中東特使とともにイスラエル、ヨルダン、モロッコなどを訪問したが、ヨルダンでは米国のこの新しい和平構想に大きな懸念が浮上している。懸念の中心はヨルダンが「パレスチナとの連邦国家」を強いられるのではないかというものだ。

 ベイルート筋などによると、クシュナー氏の和平構想はパレスチナに独立国家を与えるというものではないようだ。同盟国であるイスラエルの感情や安全保障を考慮し、パレスチナ自治区のあるヨルダン川西岸とヨルダン本国による「ヨルダン・パレスチナ連邦」の創設が構想の中核である可能性が高いという。

 事実上、ヨルダンにパレスチナの管理を委ねるという形式だ。ヨルダンは元々、ヨルダン川西岸と東エルサレムを領土の一部としていた。しかし、1967年の第3次中東戦争で、イスラエルが同地を占領。ヨルダンは1988年、同地の領有を放棄し、当時のパレスチナ解放機構(PLO)にイスラエル占領地を譲った。

 現在、ヨルダン川西岸はイスラエル占領下の中、パレスチナ自治政府が統治し、将来的には当地にパレスチナ国家が創設されるというのがオスロ合意から始まった国際的な認識だ。だが、イスラエルは治安や安全保障上の不安からパレスチナ国家創設には否定的。このため米国案は、ヨルダン川西岸の自治政府と東岸のヨルダン本国による連邦国家を樹立し、事実上ヨルダンにその管理を委ね、イスラエル側の懸念を払しょくするという構想だと見られている。

 ヨルダンは元々、人口の7割がパレスチナ人で、ヨルダン自身のアイデンティティの問題を抱えている。連邦国家構想は「ヨルダンの犠牲の下で、パレスチナ問題の解決を図ろうとする目論見だ。ヨルダンの主権を損ない、難民など新たな問題を押し付けようとするもの」(ベイルート筋)と批判する向きが多い。

 ヨルダンは石油などの資源もない人口1000万人弱の小国。米国やサウジなど湾岸産油国の援助に大きく依存しているのが現状だ。45年以上前に当時のフセイン国王がパレスチナとの連邦を提唱したことはあるが、現在のアブドラ政権はこれ以上厄介な問題を背負うのは御免だ、というのが本音だろう。数百万人のパレスチナ人を受け入れることは国家の不安定要因につながるからだ。

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