中東を読み解く

2019年6月4日

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狂ったシナリオ

 当初のトランプ大統領の思惑は、今月末のバーレーンでの会議でパレスチナ支援策をぶち上げ、和平への機運を高めた上で、政治面を中心とする和平構想を公表するというものだったのではないか。だが、この思惑は大きく狂うことになった。それは前提としていたイスラエルのネタニヤフ政権の継続というシナリオが破綻したためである。

 ネタニヤフ首相の「リクード連合」は4月の総選挙で過半数を獲得し、容易に新しい連立政府が発足すると見られていた。しかし、5議席を有していた極右の「わが家イスラエル」が、超正統派ユダヤ教徒の兵役免除廃止問題で、連立を組む他の諸政党と対立。首相が組閣完了期限までの政権樹立に失敗したため、議会が解散、9月17日にやり直し総選挙が実施されることになった。

 この日程では、たとえネタニヤフ氏が再び勝利したとしても、新政権発足には少なくとも2カ月かかり、11月にずれ込んでしまう。この間、米国は和平構想を公表することは事実上できない。なぜならば、和平構想の内容に、少しでもイスラエルに譲歩を求める内容が含まれていれば、選挙でネタニヤフ氏が敗北しかねないからだ。

 加えて、10月にはネタニヤフ首相が3件の汚職容疑で起訴される公算が強い。起訴が濃厚だという状況が強まれば、連立政権への参加に難色を示す政党も出かねない。そうこうしているうちに今度は米国で大統領選挙戦が本格化、再選を目指すトランプ大統領は和平構想に関わっていられなくなるという見方が強い。和平構想は日の目を見ずに萎む可能性がある。

  
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