中東を読み解く

2019年6月15日

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決断迫られる大統領

 だが、イランの犯行と決めつけたことで、大統領は大きなジレンマに陥ることになった。というのも、大統領はこれまで「米権益が危険にさらされれば、イランは大きな報いを受けるだろう」と公約してきたからだ。イランの犯行だと断定すれば、“レッドライン”を超えたとして報復しなければならない理屈になってしまう。

 このため大統領は革命防衛隊の海軍基地などに「限定的な」攻撃を加える選択肢も検討していると見られているが、米側が限定的というシナリオを描いても、イランは全面攻撃と受け止め、弾道ミサイルをペルシャ湾岸の米軍基地や米国の同盟国であるサウジアラビアなどに撃ち込むかもしれない。

 戦争になれば、多数の米兵を中東に送り込むことになり、これは国民の支持を得るのは難しく、再選に赤信号が灯りかねない。「トランプ大統領の頭の中には再選戦略しかない。再選するために得か損かということだが、報復すれば戦争になり、だからと言って自制すれば、公約破りと批判されることになる」(アナリスト)。大統領は報復か、自制かの決断を迫られた格好だ。

 もう1つの問題は不鮮明な映像だけでは、革命防衛隊の犯行とする確固たる証拠に欠ける点だ。イラン国連代表部はこうした米国の主張を陰謀だと否定、ザリフ外相も米国の言い分が疑惑に満ちていると非難した。確かにイラン側が反論しているように、米国の主張には疑念が残る。

 まず、機雷による攻撃だとしていることに対し、「国華産業」のタンカーの乗組員は“飛翔体”に攻撃されたと証言しており、同社社長はタンカーに爆発物が取り付けられていたという米国の主張も否定した。

 第2に、米軍の偵察機が飛んでいることが想定される中で、革命防衛隊が不発機雷を回収するために、のこのことタンカーまで舞い戻ってくるというのはあまりにお粗末過ぎるのではないか。

 「そもそもプロならば、機雷を仕掛ける際には、出所が分かるような痕跡は消しておくのが当然」(ベイルート筋)だろう。革命防衛隊の犯行とするには、まだまだつじつまの合わない点がある。

 最高指導者ハメネイ師は彼らがもっとも敬う絶対的な人物だが、同師が米国との仲介のために訪れた安倍首相と平和について話をしている時、タイミングを図るようにタンカー攻撃を行うというのは考えにくい。最高指導者の顔に泥を塗ることになるからだ。

 では誰が攻撃を仕掛けたのか。5月12日には同じ海域で、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などのタンカー4隻が同様の攻撃を受けており、恐らくは同じグループの犯行だ。

 ベイルート筋は「イランの犯行というのであれば、イランがあまりに愚かだと言うしかない」と前置きした上で、「可能性としては、革命防衛隊の跳ね上がり一派、サウジと戦争しているイエメンの反政府フーシ派などだろうが、しっくりこない。犯行声明もないし、謎だ」と頭を抱えている。

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