政府は今年4月に「特定技能」による外国人材受け入れを開始した。このことは昨年来の入管法改正論議とともに多くの関心を集めたが、5月末に公告された大卒留学生の就職先拡大を可能にする法務省告示改正はあまり話題になることはなかった。法務省の告示という位置づけではあるものの、その意味するところは大きく、今後の外国人材受け入れのあり方にも議論をもたらすことになる。本稿ではこれまでの外国人材受け入れの経緯を整理するとともに、大卒留学生の在留資格をめぐる現況と課題、さらには今後の外国人材受け入れのあり方について考えてみたい。
政府はこれまで未熟練労働者の受け入れを原則禁止し、専門的・技術的労働者のみを認めてきた。1993年には外国人技能実習制度を開始し、実習生という形式で外国人材を受け入れるものの、人材育成を通じた国際協力の一環であるという立場を貫いてきた。専門的・技術的労働者については2012年に「高度人材ポイント制」を開始するなど、その受け入れには積極的であったものの、未熟練労働力に関しては基本的には認めないという立場を維持してきた。
しかし、こうした動きに変化が見られ始め、16年には自民党特命委員会が、人手不足に直面している業種については就労目的の在留資格を付与して受け入れを進めていくべき、と提言している。その後、18年の「骨太方針」において「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とする新たな在留資格を創設する」こととし、人手不足に直面する業種について外国人材受け入れを拡大することとなった。
ただし、これはあくまでも一定の専門性等を有する人材であって、未熟練労働者や移民一般の受け入れを認めたものではない。とはいえ、その専門性等に関しては従来の「高度人材」受け入れとは一線を画し、技能実習制度を修了した労働者に関しても対象にするということから、専門性等の定義は非常に曖昧なものとなっている。18年12月には出入国管理法等の改正が行われ、この4月から介護や外食、農業、建設など14業種において今後5年間に34万人程度の特定技能1号、2号による外国人材受け入れが始まった。
なお、現在わが国で就労している外国人は146万人(18年、厚生労働省「外国人雇用状況の届け出」)であり、そのうち専門的・技術的分野が約28万人、技能実習生が約31万人などとなっている。大学等の留学生についても資格外活動として週に28時間を限度としてサービス業などでの就労を認めている。