愛知県豊田市。「TOYOTA」関連の看板がひしめき合う企業城下町の一角に、新明工業はある。創業以来70年間、トヨタのティアワン(一次下請け)企業として自動車産業の一翼を担っており、従業員数は900人を数える。しかし、同社取締役専務の近藤恭弘さんは、「採用説明会に来てくれる日本の就活生がどんどん減っている」と人手不足の窮状を打ち明ける。特に会社の中核を担うエンジニア志望の学生を採用できないという。
同社は自動車用の生産設備の設計、道路作業車両などの特殊車両製作、またモーターショーでの展示モデル製作などを担うため、オーダーメイドの仕事が多い。そのため、クライアントのニーズを的確にとらえ、形に落とし込んでいくという高度な技術が求められる。一般の企業と同じように、就職情報サイトにも登録しているが、ここ数年、大学や高専の優秀層はもちろん、それ以外も含め入社希望の学生が目に見えて減ってきた。このまま中核人材を採用できずに、技術継承が途絶えると、会社の存続にも関わる。
そこで同社はこれまでの採用方針を転換した。将来の担い手を、日本で学ぶ留学生にも広げたのである。「日本の学生が採用できなくても、同じくらい優秀な留学生がいると認識するようになった」と近藤さんは語る。今年、初めて留学生に内定を出した。整備士の5人に加え、事務部門でも1人を採用、営業部門での運用を検討する。
給与体系も人事運用も、日本人の新入社員と全く同じにする。今後も中核を担う技術者を中心に留学生の採用を検討するという。「特にうちで扱う電子機器や制御関係は、日本人でさえほとんどいない分野。外国人も日本人も分け隔てなく採って育てていかないと」(近藤さん)。そこに国籍は関係ない。
名古屋市の大手機械メーカーの下請け企業で人事担当を務める女性は、「生産管理から総務に至るまで、ホワイトカラーが足りない。今のままでは日本人が採用できないから、留学生など外国人を受け入れようと思っている。受け入れに関する新聞記事を毎日欠かさずチェックするようになった」と語る。東京で開催される外国人求人イベントにもわざわざ足を運ぶようになったという。「留学生は技能実習生に比べて日本語能力が高く、意思疎通の難しい実習生との橋渡し役としても役立ちそう」と期待を寄せる。