2024年12月9日(月)

WEDGE REPORT

2018年10月29日

 「ネットショッピングは本当に便利。北京なら24時間以内に届きます。渋滞だらけの街に買い物に出かけることを考えたらネットでの買い物のほうが賢いですよね」

 そう話すのは北京市在住の李迎新さん(仮名、34歳)。仕事で平日、休日問わず忙しいため、買い物のほとんどをネットに頼っているという。彼女のようなケースは珍しくない。中国のEC(電子商取引)市場規模は9394億ドル(約10兆5300億円)。世界市場の40%を占める世界最大のEC大国だ。規模のみならずEC化率(全小売取引に占めるECの比率)でも19%と世界トップ(2018年度通商白書、17年実績)に立ち、5%の日本を大きく引き離している。

 昨年、国営の新華社通信は北京在住の外国人留学生にアンケートをし、「中国新四大発明」を選出した。高速鉄道、モバイル決済、シェアサイクル、そしてECが選出された。中国が発明したものではないが、確かに中国生活でとりわけ便利だと感じるサービスの数々だ。ありとあらゆる商品がネットで販売されている。フランスのブランド品や日本のオムツ、ニュージーランドの粉ミルクなど人気の海外製品も越境ECで簡単に買える。優良サイトで買えばニセモノをつかまされることも少ない。そしてなにより配送が早い。

 こうした中国社会の変化はその多くがインターネットサービスの進化によってもたらされているが、ECについて言えば、不可欠なのが物流だ。日本でも近年、〝物流崩壊〟が注目を集めた。ECの普及に伴う配送需要の増加に物流企業が耐えきれないというのだ。

(出所)中国国家郵政局「2017年郵政行業発展統計公報」よりウェッジ作成 写真を拡大

 日本以上にECが発展している中国でも実は同様の問題を抱えていた。特に中国ECでは11月11日の「独身の日」など記念日セールが売り上げの大きな柱となっているため、物流需要もごく短期間に集中するという問題があった。「爆倉」(宅配便業者の倉庫が満杯となり混乱するという意)のニュースがしばしば話題となっていた。

 だが2015年の「独身の日」をピークに「爆倉」はニュースから消えた。宅配便取扱量は15年が200億件、17年には400億件と倍増しているのだが、中国物流は混乱することなく需要急増に対応し、さらにサービス水準を向上させている。中国はどのようにして物流崩壊を免れたのだろうか。


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