2024年7月22日(月)

WEDGE REPORT

2018年10月29日

中国の物流業界に
残された課題

 物流改革における巨大投資では、ドローンやAIといった最新技術についつい目を引かれてしまう。もっとも「爆倉」の解消という成果をもたらしたのは、なにもそうしたハイテク技術だけではない。

 日本の〝物流崩壊〟において、最大の問題とされたのが再配達率の高さだ。中国でも事情は同じ。再配達率をいかに下げるかが課題となる。それに貢献しているのが、コインロッカーのような形をしているスマート宅配ロッカーの普及だ。自宅ではなく、このロッカーに宅配便をとどけてもらうと、受取人には場所とパスワードが送られる。後は時間が空いた時にロッカーに出向いて受け取ればいい。

中国ではEC企業が自らオフィスビルや住宅街に宅配ロッカーを設置している(写真はアリババ子会社・菜鳥の「菜鳥駅店」) (KOTA TAKAGUCHI)

 日本にもスマート宅配ロッカーはあるが、中国との違いは普及率の高さだろう。中国では「ラスト100メートルのソリューション」と位置づけられ、オフィスビルや住宅街にもEC企業が自ら多数設置している。

 中国コンサルティング企業iResearchの報告書「2018年中国スマート宅配ロッカー業界研究報告」によると、その数は17年までに20万6000基に達した。中国政府が第13期5カ年計画などで普及を提唱したこともあり、今後も急ピッチで普及は続くとみられる。上記報告書によると、20年には77万2000基が配備される見通しだ。また京東集団、菜鳥が試験運用を始めている無人宅配車はいわば動く宅配ロッカーだ。

 また、中国の配送員は配達した個数に応じて賃金が決まる。そのため効率的に配達を行おうというインセンティブが強く、新たな技術が素早く普及する背景ともなっている。新サービスが続々登場するものの、一向に普及しない日本とは対照的だ。

 破竹の勢いで改善が進む中国の物流に残された課題はなにか。京東集団関係者は取材に対し、「物流には利便性とコストの両立が不可欠だが、中国はこの点でまだまだ課題が残る」と明かした。物流の効率性をはかる指標として、対GDP比でのマクロ物流コストがある。先進国では10%前後が平均的とされるが、中国は14・6%と高水準にある。国土が広大で輸送距離が長く、高速道路網が未整備といった構造的問題もあるが、個人事業主のトラック輸送が中心の旧来の輸送システムを引き継いでいることが背景にある。

 管理システムの改善に加え、新技術が解決の切り札になると上記関係者は強調した。無人運転によるトラックドライバーの削減、大型ドローンによる輸送速度向上によって倉庫の統廃合を実現するプランが検討されている。

 AIやドローンといったハイテクに加え、宅配ロッカーのような確立した仕組みも総動員し、速やかに社会に普及させている中国。個々の技術やノウハウ以上に中国企業の経営のスピード感こそが日本の学ぶべき点ではないだろうか。

  
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◆Wedge2018年11月号より

 

 

 

 

 




 


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