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2019年7月2日

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加藤久和 (かとう・ひさかず)

明治大学政治経済学部教授

1988年、筑波大学大学院修士課程修了。2000年、博士(経済学、中央大学)。専門は人口経済学、公共経済学。著書に「世代間格差」(筑摩書房・2011年)など。

「質」より「量」を優先する
留学生30万人計画

 わが国の高等教育機関等に在籍する外国人留学生は、18年5月現在で20・9万人と近年急増している。その背景には08年に政府が掲げた「留学生30万人計画」がある。しかし、留学生の内訳をみると半数以上が日本語学校や専門学校等に在籍しており、正規の大学・大学院等に在籍している者は14万人程度である。

 留学生による資格外活動としてサービス業等に従事する学生も多く、中には週28時間の制限を超えて違法に働く者がいることも明らかになっている。学生であるから職業に関する専門性はないものの、技能実習生と比べると就労先の選択はより自由であり、また奨学金を得られるチャンスもある。アルバイトを優先する「名ばかり留学生」も多い。

 急増する外国人留学生についてはこれ以外にも多くの課題が表れている。大学に在籍する留学生でも、一時期に多数が行方不明になったという事例も生じた。18歳人口の減少によって日本人学生の確保が難しくなった大学側が、留学生の質を十分に見極めないまま入学を許可しているという可能性ももちろん否定はできない。

 そもそも大学等への留学生は、卒業後は高度人材として扱われることとなっていた。従来、大学等に留学している外国人が卒業後に日本で就職するには「技術・人文知識・国際業務」という在留資格をとることが一般的であり(17年では91・4%)、その他も「教授」「医療」等ホワイトカラーに限られていた。大卒等の留学生は高度人材であり、非専門的職種への在留資格を認めていなかったということである。しかし、冒頭でも述べたように今年5月末の法務省告示の改正によって語学力等の一定の条件を満たせば、飲食店などのサービス業や製造業など幅広い業務で働くことができるようになった。

 その背景には、大学等を卒業しても日本で就職する留学生の数が限られていることもある。16年に大学等を卒業した留学生2万3946人のうち国内企業に就職した者は8610人で36%にすぎない。この割合について「日本再興戦略改訂2016」では5割にするとし、また「未来投資戦略2017」においても優秀な外国人留学生の就職促進を目指すとしている。

 大卒等の優秀な人材の定着はわが国にとっても重要な戦略であることは間違いないが、今回の在留資格変更の趣旨は、人手不足等の対応というこれまでの考え方とは異なる趣旨で進められた感が強い。特定技能にせよ、留学生にせよ、人手不足名目で長期的な視点を抜きに、なし崩し的に外国人材を受け入れていくという動きについては、警鐘を鳴らす必要がある。

長期的視点を欠く
外国人材受け入れ政策

 今回の法務省告示改正による就職先拡大に関しては、本来検討すべき課題が十分に議論しつくされているとはいいがたい。そこで、その課題について次の三点を指摘したい。

 第一に、なぜこれまで大卒留学生の就職率が低かったのかという根本的な背景の考察がない。留学生として従事するアルバイトと異なり、就職では日本的な働き方への適用が求められることになる。能力に応じた賃金や責任を望む留学生とのギャップも大きい。また、採用する企業の数が限られ、「技術・人文知識・国際業務」という分野においても希望する職種と採用側とのミスマッチが生じているなどの課題も指摘されている。こうしたことが背景にあって就職率が低いのであれば、職種を広げるだけで優秀な人材が日本に残るというのは楽観的すぎる。

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