Wedge REPORT

2019年7月2日

»著者プロフィール
閉じる

加藤久和 (かとう・ひさかず)

明治大学政治経済学部教授

1988年、筑波大学大学院修士課程修了。2000年、博士(経済学、中央大学)。専門は人口経済学、公共経済学。著書に「世代間格差」(筑摩書房・2011年)など。

 第二に、今回の告示改正は短期的な人手不足への対応と考えられる。しかし、こうした人手不足の状況が今後も続くとは限らない。将来、サービス業等の人材に対する需要が縮小した後の見通しはどうなるのか、という長期的な視点が欠けている。東京オリンピック・パラリンピック開催等に伴う人手不足の状況が落ち着いたとしても、サービス業等への外国人留学生の就職は変わらずに期待できるのか。日本人の新卒学生との競合もやむを得ないとする覚悟はあるのか、ということである。

 第三に、これはすでに指摘した点とも重複するが、留学それ自体がうまく機能しているかどうか、という点である。留学生の中にいるであろう、教育を受けること以外に目的を持って滞在する学生をどうするか、大学側においても経営のために十分な質を伴わない学生に学士号を与えていないか、という点も検証する必要がある。留学生30万人計画という数的な目標だけでなく、その質の側面も問い直す必要があろう。

 この他にも、家族の帯同が認められることから留学が実質的な移民受入れの手段にならないか、また外国人材の都市部集中に拍車をかけないか、といった点についても懸念される。

 以上は外国人留学生の就職に関する課題であるが、外国人材受け入れ全般についても同様な問題点を抱えている。筆者は基本的には外国人材受け入れに関して積極的な立場を取っているが、なし崩し的に、かつ受け入れる人材の処遇が曖昧なままの受け入れには疑問がある。

 今後、急速に縮小する労働力人口を前に外国人材の受け入れは不可避であるものの、どのような人材をどのような目的で受け入れていくのかという明確な視点は欠かせない。短期的な人手不足への対応は企業に生産性投資の必要性を見誤らせ、なし崩し的な受け入れは、受け入れる側の準備不足などから外国人材そのものへの地域社会の批判的な反応を引き起こす恐れがある。

 そして、移民を認めないという立場の貫徹は、日本社会への外国人材の包括を難しくするものでもある。長期的な視点や必要性の議論なしに、なし崩し的、五月雨的に外国人材の受け入れを進めることは欧米におけるポピュリズムを例にとることなく、社会的な批判が危惧される。今回の外国人留学生に対する就職拡大はそうした危うさを孕(はら)むものであるということを認識し、長期的な視点に立ち、政治が正面から議論を進める必要がある。

現在発売中のWedge7月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■米中制裁ドミノ  ファーウェイ・ショックの先
Part 1   ファーウェイ制裁で供給網分断 米中対立はコア技術と資源争奪戦へ
Interview  日本企業は機密情報管理体制の構築を急げ
Column   レアアースは本当に中国の切り札なのか?
Part 2         通信産業の根深い「米中依存」分断後の技術開発の行方
Part 3         ファーウェイ・ショックを日本は商機に変えられるか
Part 4        「海底ケーブル」と「元経済圏」中国の野望を砕く次なる米制裁
Part 5   激化する米中経済戦争 企業防衛の体制構築を

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2019年7月号より

 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 
 

関連記事

新着記事

»もっと見る