敗因はeコマースの台頭か?
判断ミスが続く。倉庫や物流といったサプライチェーンの構築に関して、2011年頃に中国側の経営幹部らが課題を提示したものの、パリ本社は「物流は金食い虫だ」と一蹴し、本社方針に固執し、検討の余地すら与えなかった。一方、その当時カルフール中国の主要競争相手は全員、自前の物流システムをもっていた。中国現地の状況をもう少し謙虚に分析していれば、異なる経営判断が下されたのかもしれない。
「泣き面に蜂」となったのは、中国政府の行政管理方針の変更。政府はスーパー経営者のテナントや仕入先に対する「搾取的」な費用徴収の規制に乗り出し、カルフールの「第3の収入源」を取り上げた。これを機にカルフールは買い取り式にモデル・チェンジすれば、状況が変わっていたかもしれないが、同社はそうしなかった。
フランス人駐在員の経営陣は、3年程度の任期で中国に派遣されてきていた。その3年間に予算達成の重責を担っており、大きな経営方針の変更にリスクが伴うだけに、決断をためらった。この辺は欧米系とはいえども、日本企業に酷似している。任期中の業績を過重に評価する余り、経営陣は作為よりも不作為を選ぶのも必然的帰結である。
判断ミスがさらに続く。
2013年、アリババや京東といったeコマース大手の台頭に伴い、中国は電子商取引時代の幕開けを迎える。ちょうどその年にカルフール中国は減収減益に陥る。両者の時期が重なったところで、その相関関係を根拠にカルフールの衰退を説明するには、確かに一理ある。ただ時間軸を辿ってそれまでの一連の出来事と合わせて文脈を組んでみると、本質的な部分が見えてくる。
逆にいえば、eコマース各社の台頭と裏腹に、黒字経営を続ける、カルフールの同業者である中国系企業も存在している。この歴然たる事実をどう説明するか? 紙幅の制限から例示や分析を割愛するが、カルフールの中国撤退は決して、ネットショッピングの拡大という単一要因によるものではないと、強調しておきたい。
次回は、日系流通・小売業の話題に移りたい。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。