2024年11月22日(金)

Washington Files

2019年7月22日

米・イラン間の緊張激化

 一方、孤立主義外交の矛盾が端的に露呈したのが、米・イラン間の緊張激化だ。

 国務、国防総省当局者は19日、イランとの関係悪化にともなうホルムズ海峡の安全確保を目的とする「有志連合」の結成に向け、日本など関係各国の外交団をワシントンに招集、米側の方針を説明するとともに、協力と結束を求めた。

 ロイター通信が18日、米政府当局者の話として報じたところによると、今回の「有志連合」結成の本当の狙いは、米・イラン間の関係悪化の余波でホルムズ海峡を航行する西側各国のタンカーに対するイラン側の挑発行為がエスカレートし、その結果として両国間の戦争の危険が高まることを極力回避することにあるという。

 もしそうだとすれば、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官ら“好戦派”とされる米政府内の強硬意見とは対照的に、戦争に踏み切ること自体に消極的なトランプ大統領の強い意向が反映されていることを意味する。

 それでも、ドイツ、フランスなどの諸国は、同海峡を行き来する自国タンカーの護衛自体についても、かえってイラン側を刺激しかねないとして、きわめて消極的態度を示しているという。

 いずれにしても、1991年当時、「有志連合」による多国籍軍が米軍主導の下でイラクのサダム・フセイン政権打倒めざし果敢に戦った時のような熱気と連帯感は、今回各国会合参加者の間ではほとんど感じらないのが実態だ。
 
 これはある意味で、ごく自然の反応ともいえよう。

 なぜなら、今回の「イラン危機」はそもそも、トランプ政権が昨年5月、日欧同盟諸国の反対を押し切り一方的に「イラン核合意」離脱に踏み切ったことから始まったものであり、積極的に対イラン「有志連合」結成に参じる道義的理由が存在しないからにほかならない。

 この点に関連して、在ワシントンの国際問題研究機関として定評のある「ジョンズホプキンス高等国際問題研究大学院」のバリ・ナスール学院長はニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで明快にこう語っている。

 「現下のイラン危機は、アメリカによるイラン核合意離脱行為と他の参加諸国の同調拒否に起因するものであり、まったくと言っていいほど、トランプ政権の手によって作り出された(manufactured)ものだ。これらの国がアメリカの説得に応じなかったのは、基本的に、トランプ政権の対イラン政策そのもののクレディビリティが欠如しているからにほかならない」(同紙5月14付)

 結局、トランプ政権は単独でイラン核合意から離脱したことがきっかけで危機を作り出した揚句、戦争回避のために今度は「有志連合」結成というかたちで各国の協力を求めざるを得なくなったわけだ。自らが抱え込んだ矛盾を白日の下にさらけ出したと言わざるを得ない。

  
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