先のG20大阪サミットの場で行われた米中首脳会談は、習近平国家主席にとってほぼ満足に近い結果となった。対するトランプ大統領は、最大の懸案貿易問題で譲歩を余儀なくされた。その背景を子細に分析すると―。
「貿易戦争はいいことだし、勝利するのはたやすい(Trade wars are good, and easy to win)」
昨年3月2日、トランプ氏が米中貿易戦争を念頭に自ら発したツイートだ。中国製品への関税を段階的に引き上げることで、中国側に勝てるという自信あふれた言葉だった。
ところが、
「わが国は当面、対中制裁関税の対象を拡大せず、貿易協議を再開する」―去る6月29日、米中首脳会談終了後のトランプ氏の発言だ。1年余り前に見せた強気の姿勢は遠くかすんでしまった感がある。
この間に何が起こったのだろうか?
まず、ワシントン・ポスト紙は、今回の米中首脳会談の結果について、以下のような「勝者」と「敗者」を色分けした“戦評”を掲載している(6月29日付け):
<勝者>
①中国
寸評「トランプは会談で、中国製品に対する残り3000億ドル分の追加関税見送りと、対フアーウェイ制裁措置を緩和した。見返りに中国側は一定の米国農産品購入の再開を約束したが、これはむしろ1年以上前から中国側から言いだしていた話にすぎない」
②米国小売業者
寸評「トランプは、スマートフォン、ベビー用製品、シューズなどの中国製グッズに追加関税をかけると脅していたが、これから夏休みにかけて稼ぎ時を迎えるウォールマート、ターゲット、アマゾンといった大手販売チェーンにとって、追加関税の見送りは大勝利といえる」
③米国消費者
寸評「もし追加関税措置が取られた場合、対中制裁による物価上昇ですでに年間800ドルの余計な出費を強いられている4人家族の平均家庭の負担が倍以上、1800ドル超にふくれ上がるはずだった」
④ファーウェイ
寸評「米政府はこれまでファーウェイ製品が対米スパイ目的に利用されているとの理由で、米企業による同社との取引を禁止してきたが、今回禁止措置を緩和した。同社は米大統領側近たちのこれまでの反対をよそに、今後は両国貿易交渉でもその一端を担うことになり、中国側の大勝利となった」
➄ウォール街
寸評「ウォール街の投資家たちは、トランプが対中協議を再開させると読んでいたが、まさにその通りになった。この結果、株価は上昇し、今月(6月)ダウ平均株価は1938年以来、最高を記録した」