2022年8月13日(土)

Washington Files

2019年7月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

<判定保留>

①トランプ大統領

寸評「当面市場と来年大統領選挙に向けて経済を利する対中協議を再開させた。ただ彼はそこまでこぎつけるのに中国側に多くを譲った。今後習近平からかなりの譲歩を引き出す可能性は残されているが、今回首脳会談では、トランプはとにかく協議再開に懸命だった印象を与えた」

②米中経済関係

寸評「トランプのこれまでの対中交渉のやり方に批判的だった人たちの中にも、中国経済について国際基準に沿うよう改革すべきだとする意見は少なくない。ただ、トランプが今回、対中要求をトーンダウンさせたことで、今後中国が改革に乗り出すのかどうか不透明」

③農家

寸評「首脳会談の結果、中国がアメリカから大豆、食肉その他の農産物買い付けを再開することになったことで、価格の上昇に多少はつながるだろう。ただ、買い付け量は以前と同程度まで回復するのかどうか判然としていない。他のビジネスもそうだが、農家も『確実性』を求めているが、まだその段階に達していない」

 上記のように、総括すると今回の首脳会談では、中国側に軍配が上がったことは明らかであり、トランプ大統領自身についても、「敗者」とは言えないまでも、習主席の前で多くを譲らざるを得なかった事実は否めない。そしてその背景にあるのが、間違いなく来年11月大統領選挙戦略だ。

 この点について、ダウ・ジョーンズ社が運営する専門投資家向け金融情報メディア「Market Watch」は7月1日、ベテラン・コラムニストによる「貿易戦争は終わった。中国が勝利した」との見出しで以下のような論評を掲載している。

 「トランプが(今回の首脳会談で)譲歩したのは、世界第2位の大国との貿易関係を根本から変えたくなかったからだ。習近平は、トランプが来年大統領選挙で自分の重要な支持基盤である農村の存在をこれ以上脅かすことを決して欲していないと、予め読み込み済みだった……」

 事実、前回大統領選挙でトランプ氏が当選できたのは、中西部のミシガン、ペンシルバニア、ウイスコンシン諸州の農家を中心とした多くの有権者が民主党から共和党に寝返ったからだった。来年選挙でもトランプ氏が再選を果たすには、これら中西部農家の支持は死活的に重要であることに変わりない。

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