迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年7月26日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

「非正規雇用」の給料が高くなる日

 では、「非終身雇用時代」に向けて具体的に何がどう変わるのだろうか。

 「終身雇用制度」と「非終身雇用制度」の本質的な違いを知っておく必要がある。「終身雇用制度」は正社員(正規雇用)の制度であり、「非終身雇用制度」は非正規雇用の制度である。正社員の給料は「固定費」であり、非正規雇用従業員の給料は「変動費」である。

 経営者には一般的に、固定費よりも変動費を好む傾向がある。変動費は経営状況に応じてその増減が容易にできるからだ。日本も例外ではない。総務省の労働力調査によれば、2017年の正規の職員・従業員は3423万人と56万人の増加、非正規の職員・従業員は2036 万人と13万人の増加となった。被雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は 37.3%と前年比0.2 ポイント微減したものの、依然として高水準にある。

 高水準の非正規雇用は何を意味するか。非正規雇用従業員の給料は変動費であり、経営状況によって容易に解雇・雇い止めできるからだ。日本企業にも、「人件費の変動費化」という高い潜在的需要があり、なるべく雇用や賃金の流動性を求めたいのが本音であろう。これが非正規雇用比率の高止まり現象につながっている。

 しかし奇妙なことに、日本の場合、正社員と非正規雇用従業員の格差が深刻な問題になっている。本来ならば、非正規雇用従業員の賃金は変動費である以上、削減されやすい分、「ハイリスク・ハイリターン」原理に則ってリスク・プレミアム分を上乗せしないといけない。ところが、なぜか日本の非正規雇用従業員の賃金は「ハイリスク・ローリターン」に逆転してしまっているのだ。この歪んだ関係もおそらく、「非終身雇用制度」が主流化した時点で、労働市場のメカニズムにより是正されていき、最終的に均衡化するだろう。

 乱暴に言ってしまえば、「非終身雇用時代」においては、非正規雇用従業員の正社員化ではなく、逆に正社員が非正規雇用に吸収される方向になるはずだ。財務的に言えば、人件費はどんどん固定費から変動費に転化していくことになる。

 故に、今後の方向性としては、企業に使ってもらえるように、スキルやノウハウはもちろんこと、固定費としての給料よりも、変動費としての報酬あるいは販売代金方式に自ら切り替えていくべきだろう。職種にもよるが、極端の話、最終的に個人事業主たる請負業者になれば、一番強い。

 さらに今後の趨勢としては、企業の早期退職、70歳定年ないし終身現役が現実味を帯びてきた。社員・従業員の身分よりも、個人事業主的なステータスがより現実的な自己防衛と老後対策になるだろう。

連載:迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

  
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