Washington Files

2019年7月29日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 このうち国際世論動向に関連して注目されるのが、イギリスはじめ欧州諸国の最近の動きだ。

 英政府は22日、ホルムズ海峡のタンカー安全航行確保に向けた各国艦船からなる「海上保護派遣団」結成計画を発表した。すでにドイツ、フランス、イタリアなど他の欧州主要国政府と協議を開始しており、もしこれが実現すれば、トランプ政権が同海峡経由の石油輸送に携わる日本など60カ国以上の当事国に結成を呼びかけてきた「有志連合」構想が骨抜きになる可能性も否定できない。

欧州独自の警備計画

 ロイター通信が「EU外交筋」の話として23日報じたところによると、同日ブルッセルのEU本部で開かれた会合で欧州独自の警備計画が英国代表から提起され、すでにフランス、イタリア、デンマークが参加意思を表明した。さらに「EU高官」は「航行の自由確保は重要だが、われわれの動きはアメリカの『対イラン最大圧力作戦』とは切り離されたものだ」と説明している。

 さらにEUは28日、一方的に離脱したアメリカを除くイラン核合意の当事国である英仏独露中とイラン、EUの代表による緊急会合を開いた。その席上、今後も核合意維持の重要性について意見が交換され、ここでもアメリカの孤立があらためて浮き彫りになった格好だ。

 一方、トランプ政権が戦争回避を模索する中で、これとは対照的に、米側がイラン革命防衛隊のさらなる挑発行為をきっかけとして戦争に引きずり込まれることを警戒する声も米国内の保守派の中で挙がっている。

 保守系雑誌「ナショナル・レビュー」は23日付けで編集者評論を掲載、「なぜイランは攻撃されることを欲しているか」との見出しで次のように論じている。

 「ある外国が、イランがそうであるようにアメリカによる攻撃を待ち望むといったことはめったにないように思われる。つい最近の挑発としてイランは、ホルムズ海峡で英国国旗を掲げるタンカーを拿捕したが、それは目立たない作戦どころか、革命防衛隊のヘリコプターがタンカーに襲いかかり、その模様をビデオ公開するという示威行動にほかならず、西側との対決姿勢を鮮明にしたものだ。

 かたやトランプ大統領は、イラン側が米軍無人機を撃墜したのを受け、いったんは報復攻撃を命令したが『不釣り合いな被害が及ぶ』ことを理由にこれを中止した。米国内には、事態がこれ以上悪化する前にこの際、イランを徹底的に打ちのめしてほしいといった期待もあるだろうが、このケースでは明らかにイランはアメリカの反応を引き起こそうとしていた。それだけに、米政権がとったより慎重な措置、すなわち“rope-a-dope”アプローチは正しい選択だった」

 「“rope-a-dope”アプローチ」とは聞き慣れない言葉だが、アメリカ・ボクシング界ではよく知られており、試合の際にリング上でパンチをかわしながらロープにもたれかかり相手に打つだけ打たせて体力を消耗させた上で、最後にこちらから決定打を浴びせて倒すという“消耗作戦”を意味する。もともと1974年に世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリがジョージ・フォアマン相手に戦った際、この戦法で勝利したことから一気に有名になったといわれる。

 同誌によると、対イラン限定攻撃中止以来のトランプ政権の対応は、この“消耗作戦”に象徴されるというわけだ。

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