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Washington Files

2019年8月19日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

“man of humility”ドナルド・レーガン

 意外にも“man of humility”と評されてきたのが、「力の外交」を推進しタカ派リーダーとして知られた第40代ドナルド・レーガン大統領だ。

 レーガン氏は大統領選直前の1980年10月、国民向けTV演説の中で「最強の軍事力が平和の基礎になる」との前提に立った上で「信念と決意だけでなく、何よりも神の前の謙虚こそが国家としてのアメリカの究極の力の源泉である」と説いた。そして就任後、当時の敵対国だったソ連側とも誠実に向き合い、ゴルバチョフ共産党書記長との間で戦略兵器削減条約(START)、さらには中距離核兵器全廃条約(INF)という二つの歴史的軍縮条約締結にこぎつけた。

 筆者は新聞社のワシントン特派員時代、上司とともにレーガン大統領との単独会見の機会が与えられ、ホワイトハウスのオーバルオフィス(執務室)に足を踏み入れた際、わざわざ入口のドアの前に立ったまま笑顔で丁重に出迎えてもらったことが印象に残っている。常に控えめで尊大さを微塵も感じさせないその人柄は、8年の在任期間通じ多くの人々を虜にし、今日まで語り草になっている。

 次の第41代ジョージ・H・ブッシュ大統領についても、謙虚な姿勢は評判だった。

 当時、米統合参謀本部議長だったコーリン・パウエル陸軍大将(後に国務長官)は昨年12月、CNNテレビ会見で故ブッシュ大統領を回想し、次のように語っている:

 「ブッシュ大統領は東西冷戦を終結させ、世界新秩序形成に大きな功績を残した。その外交成果は第二次大戦に海軍パイロットとして参戦、戦後は連邦議員、米中連絡事務所所長、国連大使、CIA長官、副大統領とこれ以上ない経験と知識に支えられたものだったが、それを可能にさせた最も重要な資質は彼のすばらしい謙遜の精神そのものだった」

 その後、第43代ジョージ・W・ブッシュ大統領、第44代バラク・オバマ大統領のいずれの場合も、それぞれの就任演説は「今ここに参集の多くのリーダーたちの前に大統領として立つことは名誉であると同時に恐縮に感じている(I am honored and humbled)」(ブッシュ)、「本日われわれに課せられた任務を思う時、恐縮な気持ちに立たされるとともに、国民みなさんが寄せてくれた信託に深く感謝する(I stand humbled and grateful)」(オバマ)と、ともに謙虚な気持ちを吐露することから始まっている。

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