全ての情報を見える化
ところで、別海町の農家にとってグローバルGAP取得はどんな意味があるのか。同町には牧草地を持ち、飼料から生乳まで一貫して管理できる経営体が多い。乳牛に必要な栄養分が満たされるように牧草やデントコーンといった飼料やビタミン、ミネラルなどを配合し、均一の状態にしたエサ(TMR)を酪農家に供給するTMRセンターもある。乳質は高く、オーストラリアやニュージーランドといった酪農の先進国から一目置かれる農家もいるほどだ。
ただし、生乳は基本的に指定団体などに販売を委託する共同販売のため、高く売れるわけではない。認証を受けても、「今は売価に影響ない」(小椋さん)状態だ。それでも認証を受けた一番の理由は、全ての情報が「見える化」されることにある。
「GAP認証では、誰がいつどこで何をしたかという履歴をすべて残すことが求められる。牛という経営のリソースがどういう状態でどこに何頭いるのか管理する、資材を買ったら在庫管理する、事故があったら経緯をすべて記録する。こういった一般の企業、工場で当たり前にしていることを、農業でもやらないといけない」(小椋さん)
グローバルGAPを取るには、あらゆる作業について、リスクの分析と評価、対策をしなければならない。農家が真っ先にしなければならないことは、整理・整頓・掃除だそうだ。
「牧場には獣医や授精士、外国人技能実習生やヘルパー(農家が休みを取るときに代わりに作業をしてくれる人)など、多くの人が来る。そういう人が来たときに、農場が整理された状態で、かつ手順書があると、働きやすくなる。この農場はここに段差があるとか、ここを増築して作っているから注意が必要だとか、そういうことが分かれば、生産効率の向上につながる」
グローバルGAPとJGAPを取った2農家は、いずれも30代前半の男性が率いる家族経営で、100~200頭を飼っている。どちらも目に見えて作業効率が良くなり、従業員の安全性も高まった。ヘルパーからも「この農場は働きやすい」と好評だ。
「経営者の意識がまるっきり変わるということが、認証に挑戦して得られた大きな効果だ」