つまり、金融引き締め政策の実施による投資の縮小が国内市場の低迷をもたらし、欧州債務危機の発生が外需の低減をもたらした中で、折からのインフレ進行が人件費などの生産コストを押上げた。その結果、今まで「投資と輸出の拡大」と「安い人件費」によって支えられてきた中国の産業発展が凋落の道をたどり始めたのである。
加速する不動産バブルの崩壊
その一方、金融引き締め策の実施はまた、不動産バブルの崩壊を加速させている。中国指数研究院が3月1日に発表したところによると、中国100都市の不動産価格は今年2月までにすでに6カ月連続で下落しているという。その中で、たとえば首都の北京の場合、2月の不動産平均価格は前年同月比で約3割も暴落したと、北京当局が発表している。去年9月頃から始まった不動産バブルの崩壊は現在でも進行中なのである。
こうした中で、実は昨年秋頃から中国国内では、中国経済の今後に関する悲観的な見通しが急速に広がっている。
たとえば、中国銀行が昨年10月12日に発表した「中国経済金融展望報告」というレポートでは、「失速」という言葉を使って「12年に中国経済が失速する危険性が大きくなっている」との衝撃的な警告を発しているのがその一例である。
元経済官僚の悲観的見通し
その1週間後の10月19日、全国人民大会財経委員会副主任の要職にある元経済官僚の呉暁霊氏も同じように悲観的な見通しを示している。彼女はある経済関係の全国会議の席上、「中国経済は今までの高度成長を維持するのはもはや無理なことで、これから長期間、苦痛の時代に入り、政府と国民が長期的困難に備えるために、準備をしておくべきだ」と発言し、国内で大きな波紋を広げている。要するに国家レベルの責任ある立場の高官がついに、中国経済はこれから「苦痛」の衰退期に入ることを認めているのである。
それから1カ月後の11月21日、今度は別の専門家がそれ以上の深刻な見通しを示した。中国の「国家発展改革委員会」直属の「マクロ経済研究院」の副院長兼研究員を務める王一鳴氏である。
「国家発展と改革委員会」というのはその前身が「国家計画委員会」だった中央官庁で、中国の経済運営の中枢を担う要の部門である。その「マクロ経済研究院」の副院長を務める王氏は当然、中国政府のトップレベルの経済ブレーンの一人であろうが、彼が11月21日付の中国共産党機関紙「人民日報」掲載のインタビュー記事に登場し、中国経済の今後に関してこんな意味深な見解を示した。
「今までの30年間にわたって中国はいわば2桁の高度成長を続けてきたが、来年からはそれが終了し、今後は中国経済が徐々に長期的な減速期に入るだろう」
それは、上述の呉暁霊氏の見通しとはほぼ同じものだが、問題は王一鳴氏の考える中国経済の「減速期」が一体どれほどの長さのものなのか、である。
それに関し、王氏が出した答えは、実は「10年から20年」という驚きの想定である。つまり中国のトップレベルの経済ブレーンの王氏が、中国経済は今後、「10年から20年の減速期」に入ることを予測しているのである。もちろん、この長い「減速期」を経て、中国経済が再起できるような保証があるわけもない。現実的に見て、今までの中国の30年間にわたる経済高度成長は、まさに今年で終焉を迎える、ということである。
そして今年に入ってからも、1月6日付の『経済参考報』の掲載論文は専門家の見解を援用して「中国経済は12年から低成長期に入る」と論じたように、今の中国では、12年からの経済減速はすでに織り込み済み事項として語られている節がある。