2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年3月12日

金融引き締め政策を継続する結果……

 こうした中で国内では、「政府が今の金融引き締め策さえ止めてしまえば経済が回復に向かうのではないか」、との声が上がっている。だが、インフレ傾向が依然として強い状況下では、政府にそんなことが出来るはずない。実際、昨年12月から今年1月にかけて、中国の金融政策の要である中国人民銀行(中央銀行)は5回にわたって「穏健な貨幣政策の継続」を強調しているし、同銀行の周小川総裁も今年1月4日、「新財経」の取材の中で、「12年はインフレを油断してはならないから、貨幣政策の変更はできない」と語っている。温家宝首相が元旦から行った地方視察の中でも、「中央としては引き続き穏健な貨幣政策を実行する方針を明確にした」と発言した。そして温首相が3月5日で行った前出の「全人代政府工作報告」でも、「物価の安定化」をはかることを今年の経済運営の要務の一つとして強調している。 

 つまり、インフレの進行を恐れるあまりに、多少の微調整を行いながらも金融引き締め政策を概ね継続していくというのが中国政府の明確な意思である。

 そして金融引き締め政策が継続される結果、投資の低迷による産業の不振も現在進行中の不動産バブルの崩壊も避けられないから、中国の国内企業と経済はまさに今から転落していく傾向が強くなろう。

 中国政府が今年の経済成長率の達成目標を7.5%に引き下げることの意味がご理解いただけたであろうか。

 だが、何の事はない。要するに政府が目標を引き下げなくても、どうせ成長率が自ずと下がっていくのだ。だから政府としては先に目標を引き下げた方が後々になって面子も保てるだろう、という程度のことである。 

 いずれにしても、今後における中国経済の転落は不動のすう勢となっており、高度成長は確実に終焉を迎えたわけである。

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◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信中国総局記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜


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