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2019年9月25日

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ジョニー・ダイモンド王室担当編集委員

英最高裁は24日午前、ボリス・ジョンソン英首相が5週間にわたり議会を閉会したのは違法との判断を示した。これはイギリスの政府制度に真新しい道をなたで切り開くようなもので、議会を閉会した王室の伝統的権限を脇に押しやったに等しい。しかし、バッキンガム宮殿は沈黙を保っている。

女王はまさに、陥りたくない状況に置かれている。最高裁が司法府、立法府、行政府、そして君主の関係性を再定義するという、政治的・立憲的な嵐のただなかに立たされているのだ。

11日にスコットランド民事控訴院・内院(最高裁に当たる)が議会閉会を違法と判断した際、王室関係者はそっけなく「女王は閣僚の助言を受けて行動するし、行動した」とだけコメントした。

この一線は24日まで保たれている。女王は議会閉会について、たとえあったとしてもほんのわずかしか選択の自由はないのだ。

一方で、総選挙を経ずに少数与党を率いるジョンソン首相は歴代首相に比べて国民の信任を得ていない、つまり首相としての権威が乏しいとも言える。それだけに、女王はジョンソン首相の助言を退けられたのではないかという意見もある。

そのような真似は、憲政上の地雷原をジグザグに走るようなものだ。

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しかし、24日の出来事は、王室にとってつらいものだった。

最高裁は、ジョンソ首相の議会閉会を違法かつ無効と判断しただけではない。政府の決定を女王が個人的に承認する「国王裁可」が、違法かつ無効だったと判断したのだ。それゆえに、女王の裁可も破棄すべきだと最高裁は判決を下した。

加えて何より、首相による違法な議会閉会のせいで、国内の政治論争のただなかに女王が引きずり込まれてしまったのだ。女王は決して立ち入るべきではないと、何十年も前から政界では合意が得られていたのに。

議会閉会の是非を問う提訴を支援していたサー・ジョン・メイジャー元首相(保守党)は、「総理大臣が君主や議会をこのように扱うなど、二度とあってはならない」と発言した。

元首相は、自分の言葉とその順番を、慎重かつ保守的に選んでいる。まずは君主、その次に議会なのだ。メイジャー氏は、今回の判決が女王の立場に与えた打撃の大きさを理解している。

ヴィクトリア女王時代の19世紀、政治学者のウォルター・バジョットは現代の女王の役割をこのように定義している。

「君主にとっては、謎でいることが命だ。魔法を日の光にさらしてはならない」

「吹き飛ばしてしまった」

現代における君主の役割は、常に影の中、憲法のグレーゾーンの中にある。成文化されていない規則や慣習は尊重されるものだという、長年の合意を前提に。そして、女王に恥をかかせてはならない、女王が政治的役割を演じているなどと批判されてはならないという、長年の合意のもとに。

しかし、ジョンソン首相がこの仕組みを吹き飛ばし、白日の下にさらしてしまった。

最高裁の判決によって今では、強い批判の光が王室に当たっている。

そして現行システムを強く支持する人たちの間でさえ、成文憲法を求める声が上がっている。国家権限の分担や、連合王国を構成する国々の存在が、いずれも明確に説明され定義されている成文憲法が今こそ必要なのだと。

そして憲法制定の動きが始まればいつか必ず誰かが、21世紀になって世襲君主が政府において果たす役割とはいったい何なのかと、問いかけるはずだ。

エリザベス女王は、王室を敬うのが当然という時代が終わりつつあるさなかに即位した。

女王はこれまで保守的な君主だった。象徴的・儀礼的な役割に留まることで、女王には十分だった。政府の影の奥深くに留まることで初めて、自分の立場が保たれるのだと理解していた。

しかし、今やそこに日の光が一気に降り注いでいる。王室が沈黙を破ろうとしないのはもっともだ。

(英語記事 Court ruling leaves Queen in political storm

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-49821233

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