2024年4月4日付の英Economist誌が、「米国のPowerなしの世界に用心せよ。トランプの同盟国を見捨てるとの脅しはすべての国が核について自由であるリスクをもたらす」との社説を掲載している。
今週は北大西洋条約機構(NATO)条約署名75周年であるが、米国がその核の傘で欧州とアジアの同盟国を守って来た。気前の良い「拡大抑止」で米国は一方で敵を封じ込め、他方で独日韓のような友好国が核兵器国になることを思いとどまらせてきた。
トランプの大統領としての復帰は核バランスがより不安定な時に混乱をもたらす恐れがある。防衛支出の少ないNATO同盟国に、ロシアが「したいことを何でもするようにさせる」とのトランプの脅しは、拡大抑止のための信頼を壊すリスクがある。これは米国が常に避けようとしてきた、すべての国が核兵器を自由に持つ状況を作り出しかねない。
より多くの国が核を持てば、さらに多くの国が核を欲し、制御不能の危機のリスクの可能性は増す。米国の力への制約は大きくなり、米国が核攻撃を受ける危険は高まるだろう。
バイデンと競り合っているトランプは、同盟国を資産でなく負担と見ている。彼の軽蔑は世界が静かであった第1期目には今ほど問題ではなかった。
今、米国はウクライナとガザの戦争に深く関与し、台湾についても雲行きが怪しい。核競争はロシアが脅しをかけ、中国が核兵器を増やす中、差し迫っている。
同盟諸国は、トランプ第1期の場合同様、彼の政権の常識的な人々が損害を限定することを願っている。しかしトランプの世界にいる人は、国内総生産(GDP)の2%を防衛のために支出していないNATO諸国が、同盟国1カ国への攻撃はすべてへの攻撃であるとの約束によって守られるべきでないと言っている。
他の人は「眠っている」NATO(米国は核の傘を提供するが、欧州から地上軍を引き上げる)を提案している。これらの考えはナンセンスである。
ポーランド外相シコルスキーはウクライナへの武器供与に失敗すれば、同盟国が「自分自身の核兵器プログラム」を始める方に向かわせると警告している。ドイツと韓国の政治家も同じようなことを言っている。