2024年11月22日(金)

家電口論

2019年10月8日

高級家電メーカー「ミーレ」

 「常により良いモノを。」これは世界で唯一「高級」家電メーカーと言われる独ミーレ社の社訓です。グローバルに商品を出し、スゴい健全経営の会社で、今ドイツで最も就職したい会社No.1にも選ばれました。オーソドックスな作りの中に、高機能を入れ込んだ製品は、非常に落ち着いた感じで、家事のサポーターとしては申し分ありません。

 それを支えているのが、長期開発です。工場は発祥の地にありますが、かなりの田舎町です。私も工場見学させて頂きましたが、常に忙しい都会と異なり、時間はゆっくり流れているようです。逆に言うと、集中しやすい環境とも言えます。移民が多いのも、今のドイツの特徴ですが、一つ一つコミュニケーションをとりながら、作業を的確に進めており、人がラインのパーツのように働く量産主義とは一線を画します。少なくとも、秒単位でタクトを争ってはいません。

 そして、品質重視の方針を守るための「ファミリー経営」。と言っても、一家ではなく、創業以来「ミーレ」と「ツィンカン」の二家でやってきています。

 グローバル化すると基本品質が落ちます。ミーレがそうならないのは、顧客対象がヨーロッパの中〜上流階級並みの人たちだからです。当然、その人たちは、目も肥えていますし、イイモノに対し、お金を出し惜しみしません。ミーレのビジネス体勢は、そんな人たちに向けたモノです。優れた品質、上質な使い心地と確実な機能。開発はスローですが、技術はじっくり熟成させます。歩みはスローなわけですが、何年かに一度大きなモデルチェンジをします。顧客の買い替えには十分間に合います。

 しかし、逆に言うと、世界中の人全員がターゲットではないですから、アメリカの某社の様な、驚異的な成功とは無縁です。しかし確実な生き方でもあり、意志を持ってそれを継いでいます。

 ダイニチ工業も似ています。一番大きなポイントは、極端な拡大路線から離れているところです。拡大より継続。それを支える品質、人。グローバル化により、失われつつあるモノがここにあります。


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