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2019年10月9日

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イギリスのボリス・ジョンソン首相は8日午前、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と電話で会談し、欧州連合(EU)離脱の新協定案について協議した。英首相官邸の情報筋によると、メルケル首相は新協定案での合意は「非常に難しい」と発言した。

情報筋は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)協定締結が「根本的に不可能」になったとしている。

ジョンソン首相は先に、テリーザ・メイ前政権とEUが取りまとめたEU離脱協定に替わる新協定案を発表。EUとの再交渉を試みているが、焦点となっているアイルランドと北アイルランドの国境問題についてこう着状態が続いている。

ドイツの首相官邸は、メルケル首相の「私的な」会話についてはコメントしないとしている。

一方、BBCのアダム・フレミング・ブリュッセル特派員は、EU高官の間では、メルケル首相がこうした発言をしたかどうかについて「懐疑論」が出ていると伝えた。

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ジョンソン首相は新協定案の中で、既存の協定に含まれる「バックストップ条項」の代替案を提示した。

バックストップとは、イギリスとEUとの間で通商協定がまとまらない場合に、北アイルランドとアイルランドの国境に厳格な検問所等を設置しないための措置。バックストップが発動すると、北アイルランドはブレグジット後もEU単一市場のルールに従うことになるため、ジョンソン首相を含む反対派は、EU離脱後もイギリスがなおEU法に縛られるとして反発している。

一方、ジョンソン氏の示した代替案では検問所の設置が必要となるほか、北アイルランド議会にEUのルールに従うかどうかの決定権を委ねている。EU側はこれらの点を批判している。

情報筋は何と言ったか

英首相官邸の情報筋によると、メルケル氏はジョンソン氏に対し、ブレグジットのこう着状態を脱するには、北アイルランドをEUの関税同盟内ににとどめるよう主張。通商上ではEU単一市場のルールに恒久的に従うしかないと話したという。

これまで交渉に前向きだったドイツの方向転換によって、合意実現は「根本的に不可能になった」と情報筋は述べている。

ジョンソン首相の報道官は、両首脳は「率直な」やりとりをしたが、交渉は決裂していないと話した。

現在、イギリス側の首席交渉官を務めるデイヴィッド・フロスト氏がブリュッセルでEU高官らと協議を進めている。しかし情報筋は、メルケル首相との電話会談は「EUとの交渉が決裂寸前」であることが「はっきりした瞬間」だったと話した。

情報筋によると、イギリスは北アイルランドに決定権を委ねることや、EU関税同盟を離脱する計画を捨てていない。EUがこの原則を受け入れない場合は「それでおしまい」で、その後の計画はEUにとって「妨げになる」戦略になるだろうと話した。

また、ジョンソン氏の提案を拒否することで、EUは「ベルファスト合意(イギリスとアイルランドの和平合意)を破壊しようとしている」と批判した。

メルケル首相の発言に「懐疑論」

BBCのフレミング特派員によると、この情報筋の話したメルケル首相の発言には懐疑論が広がっているという。

理由としてはまず、EUが交渉を最後まで諦めないと繰り返し言っているにも関わらず、メルケル首相の発言はそれに合致しないことがある。

次に、情報筋はEUが北アイルランドを恒久的にEU関税同盟に「閉じ込め」ようとしていると話したが、EU側では、あくまで通商協定が結ばれるまでの間の一案としてEU関税同盟への残留を挙げている点に疑問の声があがっていることがある。

その上でフレミング特派員は、ブレグジット情勢では今や、誰が進展を妨げているのかという責任転嫁が始まっていると説明。そうした中でメルケル首相の発言が誤訳されたか、故意に捻じ曲げられた可能性があると分析した。

一方、BBCのカティヤ・アドラー欧州編集長は、イギリスの示した北アルランドをめぐる解決策にドイツが問題を感じたこと自体は「明らか」だと指摘。

ドイツ側は希望を捨ててはいないものの、イギリスの示した新案では妥協が非常に難しいことから、合意なしブレグジットの可能性が再び高まっていると述べた。

アイルランドの首相とも電話会談

ジョンソン首相はこの日、アイルランドのレオ・バラッカー首相とも40分の電話会談を行った。英首相官邸は、双方が合意締結の意思を「強く確認した」と話した。

しかしバラッカー氏はこの日夜に受けた取材で、EU首脳会議のある来週までに合意に至ることは「非常に難しい」と話した。

バラッカー氏は、イギリス政府はメイ前首相がまとめた離脱協定を「拒絶」し、「その協定の半分だけを交渉の席に戻して、これが妥協案だと言っているようなものだ。もちろんそう呼べるものではない」と指摘。

その上で、ジョンソン氏の新協定案では、アイルランド全体に関わる問題についての拒否権を北アルランドの1政党に委ねている時点で、国境問題の原則を損なっていると述べた。

ジョンソン氏とバラッカー氏は、今週後半にも会談を行う予定だという。

EU首脳から相次いで苦言

イギリスの新協定案や交渉の態度をめぐっては、EU首脳から「馬鹿げた責任転嫁」をやめろとの声が上がっている。

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)はツイッターでジョンソン首相に「危険にさらされているのは、馬鹿げた責任転嫁のゲームに勝つことではない。欧州とイギリスの将来、そして人々の安全と利益がかかっている。あなたは合意したくない、延期もしたくない、撤回もしたくないというが、どこに行こうというのか?」と語りかけた。

https://twitter.com/eucopresident/status/1181519363783974912


また、欧州議会のダヴィド・サッソリ議長は英首相官邸でジョンソン首相と会談した後、協議には「全く進展がなかった」と発言。「どんな犠牲を払ったとしても」欧州議会議員は新協定案には合意できないと語った。

サッソリ議長は、イギリスが提示した北アイルランドに関わる税関案は、「欧州議会が合意できるような内容には程遠い」と指摘している。

今後の予定は?

イギリス議会は9月、EUからの合意なし離脱を回避する通称「ベン法」を成立させた。

この法律では、首相は10月19日までに離脱協定の議会承認を得るか、下院から合意なし離脱の承認を取り付けなくてはならないと規定。それができない場合、首相は離脱期限を10月31日から2020年1月31日まで延期するよう、EUに要請することを義務付けている。

しかし、ジョンソン首相はこの法律を「降伏法」と呼び、合意のあるなしに関わらず10月末にブレグジットを強行する姿勢を維持している。

EU離脱にまつわる今後の予定は以下の通り。

  • 10月8日:イギリス下院の現在の会期が終了。14日まで閉会する
  • 10月14日:イギリス下院が新たな会期として再開。女王の演説で、政府の法的方針が発表される。下院はその後、この演説の内容を審議する
  • 10月17-18日:イギリスのEU離脱前に行われる最後のEU首脳会議。イギリスとEUはこの日までに離脱協定に合意することを目指している
  • 10月19日:ベン法で定められた離脱協定および合意なしブレグジットの承認期限。どちらも承認されなかった場合、首相は離脱延期をEUに要請することが義務付けられている
  • 10月31日:イギリスのEU離脱期限。現在の法律では、合意のあるなしに関わらず離脱することになっている

(英語記事 Brexit deal essentially impossible - No 10 source

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49982357

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