2024年7月23日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年4月16日

「対北朝鮮向けに軍事力を強化する日本」?

 例えば中国である。3月末には新華社世界問題研究センター研究員の談話として、「日本が北朝鮮のこうした動きを利用して毎回自国の軍事力の強化を図っている」との見方を示し、4月上旬には『南方日報』が、〈(北朝鮮のミサイル発射という)機に乗じてミサイル防衛システムの検証を試みる日本〉と堕する記事を掲載。軍事力強化に向けた世論作りに利用していると批判したのに続き、『人民日報(日本語版)』にも〈朝鮮衛星の迎撃は日米にとって対中ミサイル訓練の機会である〉とした記事がアップされるというように、中国の警戒は北朝鮮よりもむしろ日本へと強く向けられたのだった。

 日本の迎撃報道に反応したのは中国のような日本の動きを警戒する国々だけではなかった。韓国をはじめシンガポールやオーストラリア、タイ、フィリピンなど、北朝鮮のミサイル発射を警戒する国々のニュースでは、それを「けしからん」とする反応の代表例として日本の動きが常に紹介され、テレビのニュース番組ではものものしいPAC3の映像が大きく映し出された。その様子はさながら日本が対北朝鮮の最前線に立っているかのような印象を世界に与えるものだったのである。

 普段国際社会で影が薄い日本が、突如、お調子に乗って主役級に押し出されてしまったようでつい気恥ずかしさを覚えずにいられなかったが、これは果たして日本が本当に望んだポジションなのだろうか。そうでなければもう少し慎重であるべきだったことは言うまでもない。

日本でほとんど報道されない北朝鮮の主張

 さて、そこで今回の北朝鮮の「“人工衛星と称する”ミサイル発射」問題を改めて検証してみたい。まず今回の打ち上げが正当だとする北朝鮮側の主張の根拠を大雑把に列挙すればこうだ。

(1)宇宙空間の平和利用は主権国家に与えられた権利であり、国連にも主権国家が自国の領土で地球観測衛星を打ち上げることを制限する規定はない。

(2)2009年4月のロケット(ミサイル)打ち上げに対する批判を受けて北朝鮮は同年、宇宙条約の加盟国になった。

(3)国連決議1718号(2006年)及び1874号(2009年)違反と責めるが、北朝鮮は両決議を受け入れたわけではない。

(4)衛星打ち上げについては、すでに昨年12月15日にアメリカ側に伝えている。

 並べてみたなかで、(1)の地球観測衛星の必要性について北朝鮮は、ここ数年、気候変動によって農業分野に大きなダメージがあったこともその理由としている。また(4)については事前にアメリカに伝えたにもかかわらず、その時は問題にすることなく食糧支援再開の「二・二九」合意に至り、その後に非難を始めるとは「どういうことか」というのが北朝鮮の言い分だ。

 どちらの言い分が正しいのかをここで検証することはできない。また軍事技術の絡む問題で北朝鮮の主張を鵜呑みにすることができないのは大前提だが、日本の報道には北朝鮮側の主張があまりに欠落していることが分かるのではないだろうか。


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