チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年4月16日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 中国の国際情報紙『環球時報』は、〈朝鮮は、国際世論の反応に関心を払い、透明性を高める方式で意見の相違を解決しようとした〉として、北朝鮮の言うことにも少しは耳を傾けるべきだと書いた。この論に全面的に賛成するわけではないが、北朝鮮が何をやっても「すべて嘘」、と決め付けるのであれは、それは最終的には戦争しかなくなる。言い分を信じるか否かは別にしても、北朝鮮には国際世論との対立点を解消しようとの意思があったことは、今回のメディア対応からも汲み取ることはできたのではないか。

北朝鮮を追い詰めても
事態は進展しない

 国連制裁の中身を見ても明らかなように、北朝鮮を取り囲む国際環境は、第二次世界大戦へと突き進んだ日本を取り巻く状況よりも厳しい。北京大学の孔慶東教授はかつて北朝鮮問題に取材に訪れたイギリス人記者に、「あなたの国がもしいまの北朝鮮のような制裁にさらされたら何日もつだろうか?」と質問して相手を絶句させたが、それほど厳しい内容なのだ。

 相手が小さな国であれば寄ってたかって追い詰めることはできるのかもしれない。だが、その果てに本当に日本の国益があるのかどうかはもう一度日本が検証すべき課題ではないだろうか。事実、小泉純一郎首相の訪朝で一気に進展した拉致問題は、その後に日本が「強硬」一辺倒に転じて以降はまったく成果を得ることができていないのではないか。

 金正日の死亡した昨年末から日本のメディアでは北朝鮮崩壊論がかまびすしい。そのなかには決まって“暴発”との表現も伴う。しかし、ここでも「暴発」の中身を具体的に描いている記事に出会うことはない。せいぜい「ソウルが火の海になる」、「難民が中朝国境に押し寄せる」といった程度の話だ。

アメリカが恐れる北朝鮮の「脅威」の正体

 だが冒頭の話に戻して、再度ミサイル打ち上げにも絡む北朝鮮の“脅威”について、少しここで触れておきたい。それは北朝鮮がここ数年繰り返してきた核実験とミサイル実験の意図がどこにあるのかについての一つの考察である。

 発言者は、長年アメリカのCIAで核兵器専門家として勤務したピーターフライという博士である。同氏はVOA(ヴォイス・オブ・アメリカ)のインタビューに答えて、こう断じている。

 「北朝鮮のこれまで2回の核実験は小型核のEMP爆弾実験だった」――。

 EMP爆弾と聞いて直ちにピンとくる読者は少ないはずだから簡単に説明を加えておこう。それは300キロから400キロ上空で核爆発させることで強烈な電磁波を発生させ、地上の電気・電子機器を一瞬にして機能停止にさせてしまう爆弾のことだ。人間を傷つけることはないが、人間の生活に必要なインフラは一瞬のうちにすべて失われることになる。GPSや携帯電話どころか、電気がすべてストップする世界が現出するというのだから、まさにピーターフライ博士の表現する「百年前に戻ったまま、復旧には3年から10年を要する」破壊力なのだ。つまり3年から10年は家に明りさえ灯らない日々となるのだ。そして、さらに懸念されるのは、そのEMP爆弾による攻撃に対して、現在のアメリカは防ぐ術を持っていないというのである。

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