田部康喜のTV読本

2019年12月8日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Jumping Rocks/UIG/gettyimages)

 BSプレミアム「Wの悲劇」(11月23日)は、地上波デジタル放送や通常のBlu-rayディスクの2K映像をはるかに上回る、解像度の4K放送をあらかじめ想定したドラマである。4K本放送は、来年1月8日(水)午後7時、再放送は1月15日(水)午前9時、2月5日(水)午後2時45分から、が予定されている。

 夏樹静子の原作は、幾度も映像化されている。なかでも、薬師丸ひろ子主演の映画(1984年、澤井信一郎監督)はいまや、クラッシックである。デジタル・リマスター版(2011年)が発売されている。いずれ4K化されることだろう。映画のフィルムには、デジタル化すると4Kに相当する情報量がある。

 テレビ放送は、モノクロからカラー、そしてハイビジョンと発展を遂げてきた。さらに高細度の4K・8K放送は、映像の表現を革新する可能性を秘めている。今回のドラマはまず、従来のハイビジョン方式によって放送されたわけだが、4K・8K時代の表現形式の片鱗をみせるものだった。

 ドラマの舞台は、和辻製薬会長の和辻与兵衛(大和田伸也)の湖畔に立つ洋館の別荘である。和辻摩子(土屋太鳳)は、与兵衛の姪である淑枝(中山美穂)の一人娘である。淑枝は、与兵衛の反対を押し切って、画家と結婚して和辻家を出たが、離婚して舞い戻り、生物学者の道彦(岡本健一)と再婚して戻ってきた。摩子は、大学生で演劇活動をしている。そのかたわら、劇作に取り組んでいて、脚本のタイトルは「Wの悲劇」である。

 冒頭のシーンは、摩子の大学の先輩で劇団を主宰している、一条春生(美村里江)が摩子の招待に応じて、湖沿いの小道を別荘に向かって歩いている。ドローンによる上空からの映像から、地上に移って、湖水を背景にして、春生と迎えにきた摩子が出会う。

 4Kの高細度映像は、人物の背景の風景もはっきりと映し出す。観る者が、あたかも映像のなかに入っていくような感覚に襲われる。

 別荘の居間の扉が、カメラの前に大きく開いて、そのなかに入って、登場人物が次々に現れる。与兵衛(大和田)の妻・みね(夏木まり)であり、与兵衛の弟である繁(鶴見辰吾)、そして二階に続く階段から、与兵衛が下りてくる。舞台のような設定の映像は、やはり空間の奥行きを表現している。

 夕食後に居間でくつろぐ登場人物たち。摩子が突然、二階の踊り場に飛び出してくる。手には果物ナイフが握られ、ブラウスに血のりがべったりとついている。

 「わたし、わたし、おじいさまを殺してしまった」

 与兵衛が摩子を襲おうとしたので、手元にあった果物ナイフで殺してしまったというのである。

関連記事

新着記事

»もっと見る