田部康喜のTV読本

2019年10月26日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「きょうは会社休みます」(2014年、日本テレビ)や「もみ消して冬~我が家の問題なかったことに~」(2018年、同)などで、ドラマに新しい風を吹かしている、脚本家の金子茂樹がまたユニークな作品を送り出した。「俺の話は長い」(日本テレビ、毎週土曜日午後10時)は、何気ない日常の会話を重ねながら登場人物の人生の真相を描いている。今冬ドラマの秀作のひとつである。

(MIND_AND_I / gettyimages)

 主人公の無職のニートの岸辺満に生田斗真、私立中学校の通う姪の秋葉春海にドラマや映画に活躍が著しい、清原果耶を起用している。満の母・房枝に原田美枝子、姉の秋葉綾子に小池栄子、その再婚相手の光司に安田顕らが配されて、金子の脚本の魅力が画面にあふれている。

 姉一家が建て直しのために、実家に3カ月の約束で同居を始める。母の房枝は、亡くなった夫が経営していた、軽食喫茶をひとりで切り盛りしている。息子の満もいったんは、別の場所で喫茶店を開いたが、経営に失敗してニートなってから6年が経つ。姪の春海(清原)は成績が優秀であるが突然、不登校になる。

 ドラマは1回に2話という異色の形式である。第2話(10月19日)は「焼きそばと海」と「コーヒーと台所」である。晴海の不登校の原因と、ニートから抜け出そうと苦闘している満の姿が明らかになってくる。

 「焼きそばと海」――満(生田)は学校に行こうとしない春海(清原)に、昼食の焼きそばを作ってやる。前の週から学校へ通い始めたのに再び、登校しようとしないのだった。満の説得に応じて、午後の授業にでることになった春海は、満に乗用車で送ってもらうことになる。春海は片思いだった、同級生の高平陸(水沢林太郎)を親友に奪われたのが、不登校のきっかけとなった。

春海 (親友に)相談してたら、とられちゃって。

満  これから海でも行くか?

春海 昔の人はどうして失恋すると海に行くのよ?

満  行くとわかるよ。

春海 だったら連れて行ってよ。

満  そのうちな。

 学校の守衛から不審者と誤解されながらも、満は春海の体育の授業風景をひそかに見た。それは、体育祭を控えたフォークダンスだった。春海が片思いの高平と手を取るのが嫌で、しかも高平を奪った親友が仲良く手を取り合っているのを見るのが嫌だったことを、満は知るのだった。

 学習塾から帰宅する春海を満が乗用車で迎えに行くことになった。ふたりはちょっとドライブがてら海に向かった。

満  なんとなくわかったか?

春海 なにが?

満  人が失恋するとなぜ海にくるかって。

春海 なんとなく。失恋して自分をみつめるのは悪くないかも。やっぱ、先に動かないと。こんなに後悔するとは思わなかった。人生の大事なことに限って、誰も教えてっくれないんだよね。

満  たまには教えてくれるひともいるんだけど、大事なこととは思わないんだ。たいていのことは、傷ついてから学ぶしかないんだよ。

春海 そんなのつらすぎる。

満  若いうちだけだよ。

春海 そうだといいんだけど。

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