田部康喜のTV読本

2019年10月26日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

過去を捨てられない葛藤を対話で描く

 「コーヒーと台所」――昼夜逆転したような生活を送っている、満も朝の5時半には必ず起きて、台所でコーヒーを入れて母の房枝(原田)に飲ませるのが日課になっている。そんな満を姉の綾子(小池)は「コーヒーを入れるよりも、就職したほうがお母さんを安心させられるでしょう」と非難する。さらに、満が喫茶店を営んでいたころの道具とコーヒー豆を捨てられないでいることにも、綾子は我慢がならない。

 満は「喫茶店には未練はない。道具も近々フリーマーケットで売るつもりだ。迷惑なら、明日からコーヒーは入れない」と言い切った。

 その夜、満は綾子の夫の光司(安田)と行きつけのバーに行った。光司はいま教材会社の営業部員だが、かつてはバンドを率いてメジャーデビューしたこともある。バーのマスターの駒野海星(杉野遥亮)もバイトの千田小雪(きなり)も、光司のバンドを知っている。綾子が再婚する際に、光司に命じたのは使っていたベースギターをすべて捨てることだった。バーに現れた光司は1本のベースを持って現れる。これだけは友人に預かってもらっていたが、その友人が田舎に引っ込んだので、駅のコインロッカーに入れていたというのである。

光司 満君がコーヒーの道具を捨てられない気持ちに共感している。

満 自分でもわからない。またコーヒーショップをやりたいのか。それでもコーヒー豆の新製品が出ると気になってしまう。

駒野(マスター) それでいいんじゃないんですか。気持ちがふっきれるまでそのままでいいんじゃないかな。

光司 どうして、僕の言いたいことがわかるの?

 清新な演技で注目を集めている、清原果耶の実年齢に近い役が初々しい。連続テレビ小説「なつぞら」(4月1日~9月28日)では、広瀬すず演じる、奥原なつの妹役の千遥役で娘を持つ30代までこなして、その演技力は驚かされた。金子茂樹の脚本は、清原の新しい魅力を引き出している。

  
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