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2020年1月4日

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イランの国民的英雄とされる精鋭部隊の司令官を米軍が空爆で殺害したことに、イラン政府が「厳しい復讐(ふくしゅう)」を誓うなか、ドナルド・トランプ米大統領は3日、カセム・ソレイマニ将軍(62)の殺害は「戦争を始めるためでなく、止めるため」だったと述べた。

4日未明にはバグダッドで、ソレイマニ司令官や同じ空爆で死亡したイラク人たちの葬列が始まった。イラクの旗を振りながら「アメリカに死を!」と叫ぶ人たちが、棺を載せた車に続いた。

これに先立ちフロリダ州に自ら所有するリゾートで会見したトランプ氏は、「合衆国の軍は、世界随一のテロリスト、カセム・ソレイマニを殺害した空爆を完璧な精度で実行した」と話した。

トランプ氏はさらに、「ソレイマニはアメリカの外交官や軍関係者に対する邪悪な攻撃を間もなく実施しようとしていた。しかし我々は、現行犯でそれを押さえ、あの男を終了させた」と述べ、「(ソレイマニの)恐怖の支配は終わった」と表明した。

報道によると、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のトップだったソレイマニ将軍は3日、イランが支持するイラクの民兵組織と共に車両でバグダッド国際空港を出ようとしたところ、貨物ターミナルの近くで米軍のドローン空爆を受けた。司令官はレバノンもしくはシリアから、バグダッドに到着したところだったという。

イラン革命防衛隊によると、複数のミサイルが車両2台の車列を直撃し、計10人が死亡した。

米国防総省は、「大統領の指示のもと、米軍はカセム・ソレイマニを殺害することで、在外アメリカ人を守るための断固たる防衛措置をとった」と発表した。

司令官の殺害によって、イランとアメリカの緊張は一気に激化すると懸念されている。米政府関係者によると、米軍は予防措置として兵3000人を中東に増派する方針という。

米国務省は、イラク国内のアメリカ人に「ただちに国外に退去するよう」警告した。

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イラク国営テレビによると、ソレイマニ司令官の殺害から24時間後に再び国内で空爆があったという。

イラク軍筋はロイター通信に、現地時間の4日未明にイラク民兵組織の車列が空爆され、6人が死亡したと話した。

米軍報道官は、バグダッド北校の空爆は米軍主導の連合軍によるものではないと表明した。

イランとイラクは反発

トランプ大統領の声明に先立ち、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「(ソレイマニ司令官が)神のもとへと旅立っても、彼の道や使命は終わらない。しかし、彼の血、そして彼と共に昨夜殉教した者たちの血で手を汚した犯罪者たちには、厳しい復讐が待ち受けている」と表明した。

イラクのアデル・アブドルマハディ首相は、米軍が首都バグダッドでソレイマニ司令官を殺害したことに反発し、「イラクの主権を傲慢に侵害し、国の尊厳をあからさまに攻撃した」と非難した。

イラク国民議会は5日、緊急招集される。

米軍の空爆では、親イランのイスラム教シーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ」を指揮していたアブ・マフディ・アル・ムハンディス副司令官も死亡したという。米政府はイラク北部で年末に米民間業者が死亡した迫撃砲攻撃は、テロ組織認定した「カタイブ・ヒズボラ」によるものだと主張していた。

現地報道によると、イラン人たちの遺体は4日夜に飛行機でイランに戻る。ソレイマニ司令官の遺体は7日、故郷のイラン中部ケルマンに埋葬される予定という。

バグダッドではソレイマニ司令官の遺影などを手に葬列に参加する市民が多数いる一方で、司令官の死を歓迎する人たちもいた。最近では、バグダッドにおける平和的な民主化要求デモを厳しく取り締まる動きがある、その対応を取り仕切ったのがソレイマニ司令官と言われている。

ソレイマニ司令官とは

ソレイマニ少将はイランで、最高指導者ハメネイ師に次ぐ2番目の実力者とみられ、国民的英雄として扱われていた。

イラン革命防衛隊の中でも国外での秘密作戦を扱う「コッズ部隊」を、1998年以来率いた。コッズ部隊はハメネイ師の直属で、司令官がコッズ部隊を指揮した21年の間に、イランはレバノンでヒズボラなど親イラン武装組織を支援し、イラクやシリアでの軍事的影響力を拡大した。

シリア内戦におけるアサド政権の戦略、イラク国内の戦闘や過激派勢力「イスラム国(IS)」との戦いなど、中東における数々の戦線を組み立てているのは、ソレイマニ司令官だと考えられていた。

イラン政府はコッズ部隊が、シリア内戦においてアサド政権に忠誠を誓う部隊の軍事顧問を務めるほか、シリア政府軍と共に戦うシーア派武装勢力に武器を提供したことを認めている。

国営テレビは「栄光の殉教者」に喪章

イランの報道はソレイマニ司令官の訃報一色で、国営テレビは遺影に喪章をかけて伝えるほか、アメリカに「厳しい復讐」を誓うハメネイ師の映像を繰り返している。

政府系チャンネルはいずれも、「栄光ある殉教者」を称える追悼番組を続けており、特に司令官のイラクやシリアでの役割を戦功として伝えている。

イラク革命防衛隊のラメザン・シャリフ報道官は生中継中に泣き崩れ、司会者に慰められた。

後にシャリフ報道官は、米軍のドローン攻撃を支援したとしてイスラエルを批判し、「アメリカとシオニスト(イスラエル)の歓喜は長続きせず、悲嘆に変わる」と警告した。

イスラエルについては、複数のイラン政府関係者が空爆に関与したと非難を強めている。

シャリフ報道官はさらに、革命防衛隊は1人の男の死で足止めされることなく、大勢が司令官の遺志を引継ぐと強調。「簒奪(さんだつ)者のシオニストや犯罪者に復讐する決意はいっそう強まる」と述べた。

ほかにも複数のニュース・チャンネルは、宗教指導者が「最善の死は神への殉教」だと説き、復讐や司令官の仕事を続けることの重要性を強調する様子を繰り返し放送した。

国営の英語ニュースチャンネル「Press TV」では、テヘラン大学の教授が繰り返し、アメリカを初めとする欧米の民間人に「直ちに中東を離れるように」と、英語で警告し続けた。

ペルシャ語放送でも英語放送でも、複数のアナリストが同様に、ソレイマニ司令官の殺害は「中東におけるアメリカのプレゼンスの終わりの始まり」になると繰り返し予測している。

(英語記事 Qasem Soleimani: Strike was to 'stop war', says Trump /Defiant Iranians mourn 'martyr' Soleimani

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50990788

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