海野素央の Love Trumps Hate

2020年1月24日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「トランプ弾劾裁判とダボス会議」です。ドナルド・トランプ米大統領に対する弾劾裁判の本格的審理が21日、連邦議会上院で始まりました。関連文書・記録の提出及び新しい証人を求める野党民主党は、審理の進め方をめぐりホワイトハウス弁護団と激しい議論を交わしました。

ダボス会議に参加したトランプファミリー(AP/AFLO)

 一方、トランプ大統領はワシントンに残らず、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席しました。

 そこで本稿では、まず弾劾裁判における民主党の議論に焦点を当て、次に裁判の米大統領選挙への影響について述べます。そのうえで、トランプ大統領のダボス会議での演説と記者会見を分析します。

「弾劾管理人」の狙い

 弾劾裁判で検察官役を務める「弾劾管理人」のアダム・シフ下院情報特別委員会委員長(民主党・西部カリフォルニア州第28選挙区選出)は、冒頭陳述で「フェア(公平)」という言葉を繰り返し使用しました。そもそもフェアは、トランプ大統領が好んで使う言葉であり、同大統領の重要な判断基準の1つです。シフ委員長はウクライナ疑惑に関する関連文書・記録及び証人による証言のない裁判は、「米国民にとって公平ではない」と主張しました。 

 確かに、シフ委員長の議論は筋が通っています。過去の弾劾裁判では、文書・記録の提出がなされ、証人が証言を行いました。例えば、1999年のビル・クリントン元大統領の弾劾裁判では、9万頁にわたる文書や3人の証人よる証言が検討されています。シフ委員長の狙いは、今回の弾劾裁判を普通の裁判ではなく、「反民主主義的な裁判」として描くことです。

20年米大統領選挙への影響

 共和党上院のトップであるミッチ・マコネル院内総務は、証人尋問なしで早期に結審することを強く望んでいます。その理由が非常に興味深いのです。マコネル院内総務は、「今のままなら無罪判決を出せるが、証人が証言すると何が起きるのか分からない」と語りました。つまり、マコネル氏は証人の一言により、審理が予期せぬ方向へ向かい、コントロールできなくなるのを恐れているのです。

 弾劾裁判の今後の焦点は、ジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の証人尋問が実現するか否かです。ボルトン氏はウクライナに対する軍事支援保留及びジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター氏の調査に関して19年7月10日、ゴードン・ソンドランド欧州連合(EU)大使の口から直接説明を受けています。民主党は原理原則を曲げないで、歯に衣着せぬ物言いをするボルトン氏が、ゲームチェンジャー(試合の流れを一気に変える人)となり、新証言と証拠が飛び出すことを期待しています。

 米クイニピアック大学(東部コネチカット州)が行った世論調査(20年1月8-12日実施)によれば、「ジョン・ボルトン元大統領補佐官が上院弾劾裁判で証言するのを望みますか」という質問に対して、66%が「望む」と回答しました。

 ただ、ボルトン氏の証人喚問が実現しなくても、民主党は大統領選挙においてトランプ大統領に対する攻撃材料を得ることができます。「トランプは証人のいな弾劾裁判で無罪になった。裁判は不公平であった」と主張できるからです。

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