2024年11月25日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年1月22日

(REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは、「トランプは2020年米大統領選挙をどう戦うのか」です。トランプ陣営は19年12月末に「リベラル派に議論で勝つ方法」(https://www.snowflakevictory.com/をウェブサイトに掲載し、早くも支持者の理論武装を図っています。

 そこには、「強い経済」「移民問題」「公平な分担」「貿易交渉」「医療保険制度改革」「支持層の拡大」「減税」「弾劾」「ジョー・バイデン」「社会主義」「経済と環境の両立」「エネルギー政策」の12項目に関するアピールポイントが整理されています。しかも、トランプ一族及び支持者が登場して、12項目を解説するプロモーションビデオ付きである点が特徴です。

 そこで本稿では、12項目のうち5項目を取り上げて、トランプ大統領が20年米大統領選挙でどう戦うのかを分析します。そのうえで、今回の大統領選挙の見どころを視点を変えて述べます。

強い経済

 言うまでもなく、12項目の中でトランプ大統領の最大の武器は「強い経済」です。「リベラル派に議論で勝つ方法」には、米経済は史上50年間で最も好調であり、トランプ大統領が就任してから700万人の新規雇用が生まれたと記述されています。新規雇用には、50万人以上の製造業及び約400万人の女性の雇用が含まれています。しかも失業率は、3.5%で低水準です。

  つまりトランプ大統領の再選戦略の柱は、雇用と失業率の数字を挙げ、民主党リベラル派と議論して勝つという戦略です。

 米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の世論調査(20年1月8-12日実施)によれば、トランプ大統領の経済政策に関する支持率は57%です。全体の支持率が43%なので、14ポイントもリードしています。共和党支持層をみると、98%がトランプ氏の経済政策を支持しており、ほぼ100%といえます。

 ちなみに、民主党支持層においても21%がトランプ氏の経済政策を支持しています。民主党候補は好調な経済に関して、「トランプ大統領はオバマ政権の恩恵を受けている」と反論していますが、この議論で同大統領に対抗できるのかは疑問です。

移民問題

 次に移民問題です。ロイター通信とグローバル調査会社イプソスが行った共同世論調査(20年1月13―14日実施)によれば、共和党支持層の中で最も関心の高い争点は、移民問題です。従って、トランプ大統領は4年前と同様、今年の米大統領選挙においても移民問題を主要な争点にするのは明らかです。

 民主党リベラル派は、訴追された不法移民の親を収監し、子供を収容施設に入れるトランプ政権の「親子分離政策」を強く批判しています。これに対してトランプ陣営は、「オバマ政権とジョー・バイデンは2014年に不法移民を収容施設にある檻に入れた」「親子分離政策はトランプ政権の前から始まっていた」と反論しています。

 ここで注目すべき点は、民主党候補指名争いを戦っているバイデン前副大統領の名前が登場することです。本来であれば、「オバマ政権は2014年に不法移民を収容施設にある檻に入れた」と記述すべきところです。にもかかわらず、バイデン氏を加えた理由は、トランプ大統領が同氏をかなり意識しているからです。

 さらに、トランプ陣営は「トランプ大統領は不法移民に反対していることを明確にしておこう」と述べています。筆者が昨年南部フロリダ州オーランドで開催されたトランプ集会に参加したとき、50代の白人男性が「トランプは合法の移民ではなく、不法移民に反対している」と強調し、合法と不法を明確に区別していました。一方、民主党リベラル派はトランプ大統領が不法移民の人権を侵害していると厳しく批判しています。


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