海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年1月22日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

ロシアの選挙介入と民主主義

 では、これまで紹介してきたトランプ陣営の議論は、果たして支持者以外の米国民に対して説得力があるのでしょうか。確かに「強い経済」は、説得材料になるかもしれません。しかし、トランプ陣営が提唱した「民主党リベル派封じ込め論」が、すべて吹っ飛ぶ可能性があります。ロシアによる米大統領選挙介入です。

 政治リスク専門のコンサルティング会社ユーラシア・グループは、今年の世界リスク1位に米国政治を挙げ、大統領選挙における「不正」によって選挙の延期ないしボイコットを求める声が上がると予想しました。同グループは不正に関して、ロシアの米大統領選挙介入を挙げています。その可能性は否定できません。

 これに関連して米ブルームバーグ通信は1月11日、ロシアが20年米大統領選挙で虚偽情報拡散を通じてバイデン前副大統領にダメージを与えようとしているのか、米当局が調査を行っていると報じました。米ワシントン・ポスト紙は同月14日、ロシア連邦軍参謀本部情報総局「GRU」が、ブリスマにハッキングをした可能性があると報道しています。

 GRUは16年米大統領選挙において、クリントン陣営、民主党議会選挙対策委員会(DCCC)及び民主党全国委員会(DNC)のコンピュータに侵入し、メールと文書を盗んだといわれています。仮にワシントン・ポスト紙の上の報道が正確であるならば、ロシアの目的はハンター氏の情報を入手して、バイデン氏に不利な情報を拡散することでしょう。ロシアからトランプ陣営へのハンター氏に関する情報提供がないとは言い切れません。

 米情報機関は前回の米大統領選挙で、ロシアが民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官に関する虚偽情報を拡散したと、断定しました。その結果、ロシアの選挙介入はクリントン氏を傷つけ、トランプ大統領を助けました。

 昨年11月に米下院で開催された弾劾公聴会において、トランプ政権の元欧州ロシア上級部長フィオナ・ヒル氏は、共和党下院議員に向かって、ロシアが16年米大統領選挙に介入したと、宣誓したうえで証言を行いました。

 バイデン氏が民主党候補になった場合、4年前と同様、ロシアの選挙介入の可能性がありますが、民主党はトランプ大統領及び共和党がその対策に真剣に取り組まないとみています。その理由は明白です。ロシアによる選挙介入はトランプ氏と共和党にメリットがあるからです。

 仮に前回の大統領選挙に続き、ロシアの選挙介入が明らかになった場合、米国民はどのような反応を示すのでしょうか。今回の選挙は、同国民の民主主義に対する価値が問われます。

  
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