ロシアの選挙介入と民主主義
では、これまで紹介してきたトランプ陣営の議論は、果たして支持者以外の米国民に対して説得力があるのでしょうか。確かに「強い経済」は、説得材料になるかもしれません。しかし、トランプ陣営が提唱した「民主党リベル派封じ込め論」が、すべて吹っ飛ぶ可能性があります。ロシアによる米大統領選挙介入です。
政治リスク専門のコンサルティング会社ユーラシア・グループは、今年の世界リスク1位に米国政治を挙げ、大統領選挙における「不正」によって選挙の延期ないしボイコットを求める声が上がると予想しました。同グループは不正に関して、ロシアの米大統領選挙介入を挙げています。その可能性は否定できません。
これに関連して米ブルームバーグ通信は1月11日、ロシアが20年米大統領選挙で虚偽情報拡散を通じてバイデン前副大統領にダメージを与えようとしているのか、米当局が調査を行っていると報じました。米ワシントン・ポスト紙は同月14日、ロシア連邦軍参謀本部情報総局「GRU」が、ブリスマにハッキングをした可能性があると報道しています。
GRUは16年米大統領選挙において、クリントン陣営、民主党議会選挙対策委員会(DCCC)及び民主党全国委員会(DNC)のコンピュータに侵入し、メールと文書を盗んだといわれています。仮にワシントン・ポスト紙の上の報道が正確であるならば、ロシアの目的はハンター氏の情報を入手して、バイデン氏に不利な情報を拡散することでしょう。ロシアからトランプ陣営へのハンター氏に関する情報提供がないとは言い切れません。
米情報機関は前回の米大統領選挙で、ロシアが民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官に関する虚偽情報を拡散したと、断定しました。その結果、ロシアの選挙介入はクリントン氏を傷つけ、トランプ大統領を助けました。
昨年11月に米下院で開催された弾劾公聴会において、トランプ政権の元欧州ロシア上級部長フィオナ・ヒル氏は、共和党下院議員に向かって、ロシアが16年米大統領選挙に介入したと、宣誓したうえで証言を行いました。
バイデン氏が民主党候補になった場合、4年前と同様、ロシアの選挙介入の可能性がありますが、民主党はトランプ大統領及び共和党がその対策に真剣に取り組まないとみています。その理由は明白です。ロシアによる選挙介入はトランプ氏と共和党にメリットがあるからです。
仮に前回の大統領選挙に続き、ロシアの選挙介入が明らかになった場合、米国民はどのような反応を示すのでしょうか。今回の選挙は、同国民の民主主義に対する価値が問われます。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。