海野素央の Love Trumps Hate

2020年1月8日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

(REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは、「トランプのイラン司令官殺害の動機」です。ドナルド・トランプ米大統領は2020年1月3日、イランの英雄ガセム・ソレイマニ司令官をイラクで無人機攻撃により殺害しました。トランプ大統領は米国に対する「差し迫った脅威」を司令官殺害の理由に挙げました。

 しかし、トランプ大統領の司令官殺害の動機は一体何だったのでしょうか。本稿ではトランプ氏の動機に焦点を当てます。

2012年と2013年のツイッター

 大統領に就任する前の2012年10月9日、トランプ氏は自身のツイッターに再選を狙うバラク・オバマ前大統領に関して、「オバマの支持率が急落している。彼がリビアかイランを攻撃するのを注意してみろ。彼は絶望的だ」と投稿しました。同月22日には「再選のために戦争をするというイランカードをオバマに使わせるな。共和党、気をつけろ!」とツイッターで警告を発しています。

 さらに、トランプ氏は2013年9月16日、「オバマ大統領は面子を保つために、ある時点でイランを攻撃するだとう」とつぶやきました。

 2012年米大統領選挙において筆者は、研究の一環として南部バージニア州フェアファックス市にあるオバマ選対に入り、ボランティアとして活動をしていました。筆者が知る限りでは、選対の中でオバマ前大統領のイラン攻撃の可能性について話題が挙がったことはありませんでした。ただ、トランプ氏は再選を狙うオバマ前大統領が投票日の直前にイランカードを使用して戦争を仕掛けてくるとみていました。

「心のブレーキ」と「最大のジレンマ」

 オバマ・トランプ両氏の立場は、今逆転しています。上で紹介した3つのツイッターを読むと、再選を狙うトランプ大統領の頭の中には、自身の面子及び支持率維持のために、イランカードを切って、大規模な攻撃を加えるというオプションが存在しているとみてよいでしょう。

 ただし、トランプ大統領は支持者を集めた集会で「自分は若い米兵を帰国させるために、大統領に選ばれた」と繰り返し主張しています。トランプ支持者は世界の出来事に対する米国の無関与を支持しているので、中東に米兵3000人を増派する決定は公約違反に成りかねません。

 従って、イラン攻撃の決断に迫られたとき、トランプ大統領の心にブレーキがかかる可能性は否定できません。その結果、トランプ氏は「最大のジレンマ」に陥ることになります。

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