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2020年1月8日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 世界的な供給過剰と需要の落ち込みにより、LNG(液化天然ガス)スポット価格が急落している。エネルギーの約25%をLNGに依存している消費国の日本にとってはLNGスポット価格の下落は好都合だが、困っているのが原油リンク価格で割高な長期契約を締結している日本の電力・ガス会社だ。供給過剰時代を迎えて、日本経済にとってなくてはならないエネルギー源となったLNGの調達方法が問われている。

(Sergii Tverdokhlibov/gettyimages)

九州電力が140億円の損失

 LNGの調達は長期で契約しているため、需要がなくても定期的に輸入されてくる。このため、受入基地のタンク容量を超えたLNGを仕方なく市場で売却すると、長期契約価格より低いスポット価格での売却となるため、売価損が出てしまうことになる。九州電力では2019年度第2四半期決算において、下期発生見込み分を含め140億円程度の転売損失を計上した。

 また背景には、電力会社としては、最悪の事態である停電を避けるため、安全を見込んでLNGを多めに長期で調達契約していたところ、原子力発電の稼働が認められた。このため、当初見込んでいたほどLNG燃料として使わなくて済むようになったことも需要減の理由になっているようだ。

 世界経済の減速により、このところ市場の需給で決定されるLNGのスポット価格が1ブッシェル当たり5ドル台まで下落、13~14年に18ドルもしていたのと比較すると3分の1以下にまで急落している。価格の下落は、LNG最大の輸入国の日本にとってはエネルギーコストの節約になるが、想定以上に下落したことで九電のように赤字が出てしまうところもある。

 市場の見通しでは、30年に向けて豪州など4大生産国はいずれも供給が増えるため、同年ごろまでは供給が過剰になり、価格は低迷すると予測している。となると、LNGの安定供給を確保するために締結した長期契約が皮肉にも裏目に出てしまう。

頼れるLNG発電

 LNGは東日本大震災以降、クリーンなエネルギー源として、電力、ガス会社で燃料として使われる比率が2010年以降、急速に高まった。12月15日にマドリードで開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)で、日本がLNGの次に依存している石炭火力発電への批判が高まるなど、石炭の使用に対する逆風が強まっている。

 電気事業連合会によると、2017年度で見ると電源別発電電力量はLNGが38.3%でトップ、次いで石炭が29.1%、次いで水力の8.7%で、太陽光や風力発電など新エネルギーは6.7%にすぎない。またガス会社は9割以上をLNGに依存しており、まさに日本のエネルギーを支える最大の源になっている。

 LNGに次ぐ石炭火力は二酸化炭素排出量を削減するためには減らさざるを得なくなっている。また今後増えると予想される新エネルギーについても天候により発電量が変動するなど安定性に欠ける欠点がある。一方でLNGを燃料にすれば安定的な発電ができるため、今後も最も頼れる電源になる。

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