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2019年12月24日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 「1泊数十万円かかっても日本文化の最高峰を実感したい」、という外国人富裕層や日本の大手企業の幹部研修などに限定した文化体験サービスを提供しているエクスペリサス(東京都渋谷区、丸山智義社長)というベンチャー企業がある。これまで、日本の旅行代理店は団体や個人旅行では存在感を発揮してきたが、富裕層に満足してもらえるような旅行プランは提案できていなかった。そこでインバウンドを中心に、本物の日本文化を体験できる「貴方だけの旅行プラン」で顧客をつかもうとしている。

外国人に人気な北海道ニセコのスキー場(maccj/gettyimages)

プライベートな至福体験

 日本を代表する観光地の京都には一般の観光客は入れない格式の高い神社や寺が多くある。めったに入れない名刹の体験ツアーを組み入れ、有名寺院を特別に貸し切りにして夜景を堪能してもらったり、京都の超一流伝統文化を凝縮した茶道、京料理、能楽などを組み込んだプランや、日本を代表する禅寺住職の講話を聞くものなどを用意している。大手の旅行代理店ではここまで内容の濃いコンテンツを組み込むのは至難の業だ。文字通りプライベートな至福体験によって日本文化に触れてファンになってもらい、体験後に口コミで周辺の富裕層に広がることを狙っている。

 年間数百組規模にまでする計画で、日本人と外国人の半分ずつを予定しているという。一組のツアー料金が一晩100万円以上する場合もあるが、得難い体験ができることを思えば、富裕層にとっては法外に高い値段ではないようだ。

「ジャパン・ビスタ」ブランド

 いくら神社仏閣にパイプがあっても、外国人富裕層を日本に連れてこなければビジネスにはならない。このため、丸山社長は世界中に出張して数年間かけて、主要都市の富裕層呼び込めるプライベートトラベルデザイナー、プライベートバンク、クレジットカード会社、富裕層向け旅行代理店など2000社以上とネットワークを作り上げ、「Japan Vista(ジャパン・ビスタ)」ブランドとして独自の旅行ツアーコンテンツを盛り込んだメールマガジンを配布する。

 神社仏閣、美術館、有名アーティスト、有名レストランと協力しながらコンテンツを作成し、インターネットを通じて海外の富裕層をまとめている旅行会社代理店などに提案する。直接アプローチするのではなく、富裕層を多く囲っている会社に対して、興味を持ちそうな旅行プランを提供することで、短期間に旅行客を獲得しようというビジネスモデルだ。

 丸山社長は「ホテルや航空券の予約、低単価の体験プランは競合他社が多く、コモディティ化しやすいため、価格競争に陥りやすい。エクスペリサスは高単価の市場を攻めつつ、模倣性が低い商品を数多く作ることでコモディティ化を回避したい。大手資本がしたくても真似のできない商品を作っていきたい」と「ジャパン・ビスタ」の独自性を強調する。一組当たりの旅行単価も高いため、利益率の高いビジネスを展開できる。

 それなら、マスコミにPRしなくても密かにビジネスをしている方がもうかりそうな気がするが、丸山社長は「いまのタイミングで富裕層の特化した会社があることを紹介することで、日本における富裕層旅行のベストパートナーを目指す」と話す。「ジャパン・ビスタ」ブランドで富裕層を囲い込んでおけば、他社に奪われる心配はないという自信があるようだ。

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