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2019年12月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 首都圏では中古マンションの成約件数が新築より2016年から18年まで3年続けて多くなっている。マンションを建設する大手ゼネコン、デベロッパーなどへのアドバイザリー業務を手掛けるトータルブレインの久光龍彦社長に、中古マンションが売れている理由と今後の流れについて聞いた。

(byryo/gettyimages)

安心して購入できる

Q 中古マンションが売れている理由は何か。

A 大きな理由は3つある。第一は新築と比較して価格が3割前後安く購入できる。第二にリノベーション技術が格段に進歩したおかげで、中古だが見た目は新築と変わらないほど綺麗になる。売る側が2年間の保証を付けたことで、買い手が安心して購入できるようになったことで、これが大きい。第三に場所、立地が良いマンションが多いので、通勤の便利さを求める人にとって好ましい。

Q 新築マンションの供給戸数が絞られている影響は。

A 新築マンションの供給量が首都圏で今年は年間3万戸ほどしかなく、買う側として選択の余地が少なくなっている。特に都心では新築マンションの供給が少なく、一方で中古は質の良い物件があり、買う側も中古への関心が高まっている。

Q 中古の質の良いマンションは何時頃のものか。

A マンションの建設は景気の良い時に建てられたものは、建築費に余裕があるから、例えば柱部分を部屋の外に出すなど部屋が広く使えるようにしている。一方で景気の悪い時に建てられたものは経費を節約するため柱部分を部屋の中に入れ込むため、居住面積が目減りするなど目に見えないところで建築費をカットしている。結果的には景気の良い時に建てられたマンションの方が質が良い。

Q 新築マンションの売り方にも変化があるようだが。

A 一昨年までは販売価格を少し下げても完売しようとしていたが、今年に入ってからは、値下げはしない代わりに販売期間を延長して売り切ろうとしている。金利が事実上ゼロなので、大手ゼネコンは可能な限り価格を維持しようとしている。大手が下げないので中小のデベロッパーも価格を下げないで販売できている。以前は資金を早く回収しようとして、多少価格を下げても売り切りたがる傾向があったが、いまは資金繰りに余裕があるせいか無理な値下げはしていない。

Q 新築マンションの価格が下がらない理由は何か。

A 人手不足、建築費の上昇が理由に挙げられる。リーマンショック後の2011年と18年を比較すると、新築の場合、マンションの売値が48%も上がっている。しかし売値が下がらないのはそれだけではない。リーマンショック後あたりから、実はゼネコンが粗利益をそれまでの5%から10%に引き上げたのもマンション価格が高騰した原因だ。これによりゼネコンの利益水準を押し上げることができた。

拡大する中古市場

久光 龍彦(ひさみつ・たつひこ)1940年生まれ。64年に長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)に入社。83年に同社専務、86年に長谷工不動産社長、99年からトータルブレイン社長

Q 中古市場はこれからさらに伸びるか。欧米は新築よりも中古の方が取り扱い多いが、日本もそのようになるのか。

A 新築マンションが買いたくても、所得の伸びがないので買い手の手が届かない。一方で、郊外の一戸建てか都内の中古なら買えるという層が多くいるので、中古市場が伸びるのは必然性がある。建築費が下がれば新築の需要が増えるだろうが、いまのところそれは考えられない。このため、大手デベロッパーが中古市場にどんどん進出している。大手が進出すれば買う方も安心感につながり、市場はさらに拡大する。しかし、欧米のように中古の契約が新築を大幅に上回るようになるには5~10年は掛かるのではないか。

 これまでは新築をどんどん建てるスクラップ・アンド・ビルドの方針を続けてきたが、これからはそういう時代ではない。中古の不動産をもっと活用する時代ではないか。1981年6月より前に建築確認申請した旧耐震基準のマンションの場合は補修して新耐震基準を満たすようにするか、立て直すかのどちらかになるが、立て直すのはマンションンに住んでいる人の合意を取り付けるのが難しい。

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