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2019年11月26日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

(Natalie_gettyimages)

 「1988年に建てられた170戸のリゾートマンションですが、いま人が住んでいるのはわずか3部屋で、皆さん70歳以上の高齢者です」と、空き家の恐ろしい実態を話してくれたのは、新潟県の南部にあるスキーリゾートで有名な湯沢町のマンション管理コンサルタント。

 同町には1980年代の後半のバブル期に建設されたリゾートマンションが59棟あり、戸数でいうと1万5000戸もある。その大半がバブル期前後のスキーブーム時代に、実需や将来の値上がりを見込んで投資用に1戸当たり数千万円で購入されたものだが、バブルがはじけて暴落、さらにリーマンショックで追い打ちがかかり、今では安いものは1戸当たりの価格が数万円から高くても200万円程度。事実上、値が付かない物件も多いのが実態だ。

 リゾート用に建てられたため部屋の面積が25~50平米と小ぶりのものが多い。25平米の部屋で固定資産税は年間5万~6万円になり、電気・水道の基本料金やマンション管理費なども含めた年間費用は1部屋を所有するだけで35万~45万円は掛かるという。

 かつてはスキー客でリゾートマンションを利用する人も多かったが、今は1年で1日でも使う割合は1割以下と言われるほど。こうなると、マンション管理組合が管理費を徴収しようにも相手が見つからない状態が起きている。最終的にはマンションを競売にかけるが、ただ同然の価格にしても買い手が現れないことが多く、やむを得ず管理組合が引き取る。こうした状況を不動産ジャーナリストの榊淳司氏は「湯沢町の中でも特に苗場エリアのリゾートマンションは『墓場』状態にある」とみる。

 しかし、このままでは町自体が死んでしまう。何とか打つ手はと知恵を絞った結果、生まれたのが、使われていないマンションを民泊で活用できないかというアイデアだった。ただし民泊は法律により1年間で180日しか営業活動できないという制約がある。

 湯沢の冬場はスキー客でにぎわうほか、苗場エリアでの夏場は毎年8月上旬(2020年は8月下旬)に同スキー場で日本最大の屋外音楽イベントの「フジロックフェスティバル」(通称フジロック)が数日間開催され、国内外から有名なミュージシャンが多数やってくる。つまり、スキー客が見込める3カ月と、「フジロック」の宿泊客が1週間程度なら確実に需要がある。しかも苗場地区は有名ホテル以外の宿泊施設がほとんどなく、「フジロック」開催時の数万人の宿泊客を同町のリゾートマンションに民泊客として泊まってもらえば、「墓場」同然のマンションが民泊リゾートとして蘇る可能性がある。しかし、マンションの中にはマンション規約で民泊禁止を定めているところもあり、どれだけ足並みがそろうかは未知数の部分がある。

 それでもプランが成功すれば、冬場と夏場で外国人を含めた観光宿泊客を見込め、町に活気が戻るかもしれない。マンション所有者にとっても、民泊活用すれば収入が入ってくるため、管理費、固定資産税の支払い義務が生じるだけでほとんど利用しないという最悪の状態から脱出して毎月利益を得られるようになる。

 全国には利用されずに放置されているリゾートマンションがいくつもある。スキー場、温泉、マリンスポーツなど観光資源がある場所であれば、インバウンド(訪日外国人)をうまく誘導することにより、民泊活用はリゾートマンションを蘇らせる一例として参考になるかもしれない。

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