米国のメディア事情に詳しいニューヨーク在住のジャーナリスト津山恵子さんが日本記者クラブで、「トランプ政権と対峙する米メディア NYからの報告」と題して講演した。「来年の米大統領選挙報道の舞台は100%デジタルになる。候補者はツイッターやフェイスブックなど、どれだけソーシャルメディアに露出したかを競い合っている。
そういう中で、ウクライナゲートとトランプ大統領弾劾の行方が注目されるが、フェイクニュース、フェイクニュースの動画版ともいえるディープフェイクなどの偽情報が有権者をだます状況が生まれることが心配される」と述べ、20年の大統領選挙は波乱が避けられないとの見方を示した。
FOX一人勝ち
大統領選挙があと1年後に迫る中で、政党別のメディアに対する信頼度を18年時点で比較すると、民主党支持者は76%が信頼しているのに対して、共和党は21%しかなく、大きな開きがあり、このギャップは16年の選挙を境に拡大してきている。「分断化」については、メディアがあおっているというよりも、視聴者の側が分極化してきているのではないか。
主要なメディア報道が「右寄り」か「左寄り」かをみると、「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」や「CNN」などリベラルに寄ったメディアの数の方が多い。右よりは「FOXニュース」、「ブライトバート」などがあるが、保守系ニュースを供給するメディア数は少ない。
そういう中で2000年代の前半からFOXの一人勝ちが続いており、いまもトップだ。いまは「MSNBC」が頑張っているからそれほどでもないが、数年前までは、CNNとMSNBCの視聴率を加えても、FOXの方が多かったほどだ。
団結して大統領に対抗
トランプ大統領とメディアの対立が激化したのは、18年の中間選挙報道の際にホワイトハウス詰めのCNN記者が、大統領会見でルールを破った、とされることなどが理由で記者パスをはく奪される事件などが起きてからだ。
そうした中で、大統領を取材するメディアは記者同士が団結して大統領に対抗しようとしている。ホワイトハウスの記者会見やぶら下がりでは、一人の記者が続けてフォローアップ質問はできないしきたりになっているが、いまではライバル記者がフォローアップ質問をするなどして、記者同士が協力しながら大統領に対峙しようとしている。
この1年は大統領の報道官のブリーフィングもなくなり、大統領が時々行うぶらさがりで質問し、大統領専用機エアフォースワンに乗り降りする瞬間に大統領に大声で質問して聞きだすのが精一杯の状況になっている。こうした米国メディアのホワイトハウス詰めの記者の苦労ぶりを聞くと、髪の毛も逆立つくらいつらい思いをしているのだと思う。