2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年1月8日

米国、ロシアから大量供給も

 また期待の大きいのが米国からのシェールガス由来のLNGの輸出だ。米国は自国のエネルギー安全保障の観点からLNG輸出には当初は慎重な姿勢を示していたが、シェールガスの増産により昨年はエネルギーの輸入国から輸出国になったと報道されている。このため、輸出できるものは積極的に輸出する姿勢に変わってきており、トランプ政権もこの方針を推進している。

 一昨年の4月には住友商事など日本企業が手掛けるシェールガス由来のLNGは米メリーランド州コーブポイントから積み出され、パナマ運河経由で年間230万トンが日本向けに順調に輸出されている。東京ガスや関西電力の燃料として供給される。

 業界によると、米国からのシェールガスによるLNGの日本向け供給量は、20年以降には年間1000万トン近くまで増える見通しで、これまで、中東、豪州、マレーシアが多かったLNGの調達国の比率は大きく変わりそうだ。

 最近のニュースでは、ロシアのガス大手ノバテクは、同国初の北極圏のLNG基地から日本に初めてLNGを出荷したと発表した。このLNG基地は欧州に近いため、砕氷LNGタンカーで北極海を西回りに航行して欧州でLNG船に積み替え、スエズ運河を通過するルートで日本に到着する。このほかにノバテクが主導する「アークティック2」プロジェクトは23年以降に本格的にLNGを生産する計画で、年間1980万トン供給する予定だ。これには「サハリン2」プロジェクトに参加した経験のある三井物産が出資、輸出される分のうちの一定量は日本が購入することになりそうだ。

つきまとう中東リスク

 しかし、中東地域ではいまだに一触即発の関係が続いており、産油国の原油減産に直結する地政学上リスクがつきまとう。

 そう思っていたら、年明け早々の1月2日に、米軍がイラン革命防衛隊の司令官を殺害する事件が勃発、これにより原油価格が急騰した。しかし、LNGのスポット価格は、事件発生前の1月3日の5.26ドルに対して、事件後の6日は5.35ドルと、いまのところ影響は小さい。その理由として専門家は「湾岸諸国で最大のLNG産出国のカタールは、イランと米国の双方の陣営と友好的な関係にあり、LNG液化プラントやLNG船が攻撃のターゲットにはなりにくいためだ。しかし今後、油価が継続的に上昇すれば、2020年後半、それにリンクする長期契約LNG価格に影響する可能性がある。ただし、油価とLNG価格はリンクするものの、それが反映されるまでには数か月の時間差がある」とみている。

 また、中国、インドのLNG消費量が大幅に増加する可能性があり、この2国の消費が拡大すれば、需要が伸びてLNGの需給関係も変わってくる。また、環境問題への対応策が求められる中で、石炭を原料とする火力発電への反発が強まってきているため、将来的にはLNGを原料とする発電所が増える可能性もある。そうなれば、LNGの需要が盛り返して価格が急騰する可能性も出てくる。

 こうした変動要因を考慮すると、一時的には高い買い物と思えるかもしれないが、安定的な調達とのバランスを考慮して、LNGの長期契約もある程度は含めないといけない事情もある。電力・ガス会社は、中長期的な需給見通しを見極めながらLNGを調達することになるが、政治、経済情勢による変動要素が多いだけに難しい判断を迫られる。エネルギー源を外国に依存している日本の宿命と言える。


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