世界の記述

2020年1月8日

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 イラク軍報道官は1月3日、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官と、イラクのシーア派武装組織の連合体「人民動員隊」のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官が前夜遅くに死亡したことを明らかにした。

Eblis/iStock / Getty Images Plus
 

 首都バグダッドの国際空港にロケット弾が撃ち込まれ、同空港を後にしようとしていた2人の乗った車が爆破されたためであった。事件後、人民動員隊報道官は、2人の死亡の責任は敵である米国とイスラエルにあると語り、殺害が米国の画策によるものと名指しで非難した。

 他方、平素は攻撃の有無を曖昧にすることも少なくない米国も、米国防総省が同日、トランプ大統領がソレイマニ司令官の殺害命令を下したことを明らかにし、対決姿勢を鮮明化した。

 米国とイランの関係は、米国が2017年5月にイラン核合意から離脱して以降、悪化の一途を辿っている。ここに来て目につくのは、イランによると思われる、影響下の勢力を使ったイラク軍基地の駐留米兵士などへの攻撃である。

 昨年12月27日にも、北部キルクークのK1イラク軍基地に30発超のロケット弾が撃ち込まれ、米国籍の請負業者の民間人1人が死亡し、米軍兵士4人が負傷する事件が起きていた。

 この攻撃がソレイマニ革命防衛隊司令官の殺害命令につながったようだ。イラクでは10月下旬からだけでも11回もの同様の攻撃が行われていた。因みに、犯行の疑われるイラン影響下の勢力を、背後から直接指揮し、統治する張本人が同司令官であった。

 まずK1基地への攻撃が行われた2日後の12月29日、米軍は報復としてテロ組織とみる「カタイブ・ヒズボラ(神の党旅団)」の武器庫などを空爆し、戦闘員25人を殺害した。ところが12月31日から翌1月1日にかけて、在イラク・米大使館が人民動員隊の指導を受ける親イランのデモ隊に襲われ、一時的に包囲される事件が発生してしまった。

 このため、エスパー米国防長官が1月2日、イランや支援組織が新たな攻撃を画策している可能性があるとして、対イラン先制攻撃もあると警告を発したが、ソレイマニ革命防衛隊司令官の暗殺はその翌日のことであった。

 米国とイランによる昨年末から本年初にかけての攻撃の応酬で懸念されるのが、イランとその支配下勢力による、中東のみならず世界各地での米国・イスラエルの権益への報復と、それに怒った米国のイラン限定攻撃である。

 米国によるソレイマニ・イラン革命防衛隊司令官の暗殺が、本年の中東情勢を悪化させる引き金となるのか否か。特に米大統領選挙を本年11月に迎えるトランプ大統領が、自分の指導力を見せようとイラン政策を硬化させる可能性もあるだけに注目される。

  
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