2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年1月16日

 今回のテーマは、「キリスト教福音派と極端な選択肢」です。米メディアによれば、ドナルド・トランプ米大統領がイランのカセム・ソレイマニ司令官殺害を選択したとき、国防総省の職員は驚きを隠せなかったといいます。

 トランプ大統領はどのような状況下で「極端な選択肢」を選ぶのかが、ソレイマニ司令官殺害で、はっきり見えてきました。そこで本稿では、トランプ氏が極端な選択肢を受け入れる状況を分析します。

(AP/AFLO)

「支持基盤崩壊」の回避

 トランプ大統領の支持基盤であるキリスト教福音派から、昨年12月「トランプ罷免発言」が飛び出しました。ウクライナ疑惑におけるトランプ大統領の言動は、不道徳であると言うのです。この発言にトランプ氏は、敏感に反応しました。

 再選の選挙において、キリスト教福音派の影響力を無視することは不可能だからです。

 2006年2月に南部テキサス州サンアントニオで設立された福音派団体「イスラエルを支持するキリスト教徒連合(CUFI:Christians United for Israel)」には、800万人のメンバーが所属しています。同団体は、オバマ政権の「イランとの核合意」反対及び「エルサレム大使館移転」賛成の立場をとっており、反イラン色を強く打ち出しています。

 米メディアによれば、同団体の創設者でテレビ伝道師のジョン・ハギー氏は、イランのマフムード・アフマディネジャド前大統領をヒトラーと比較して、同国への軍事攻撃を求めたことがありました。

 今回のソレイマニ司令官殺害を推したといわれているマイク・ペンス副大統領及びマイク・ポンぺオ国務長官は共にキリスト教福音派で、彼らの宗教色が外交に色濃く反映されています。そもそもトランプ大統領は2016年米大統領選挙で、キリスト教福音派の票獲得を狙って、ペンス氏を副大統領に指名しました。

 しかし、そのキリスト教福音派がウクライナ疑惑におけるトランプ氏の言動を国益よりも個人的利益を優先したとみて非難しました。そこで、「反イラン」のキリスト教福音派の「トランプ離れ」を食い止めたい大統領の強い想いが、ソレイマニ司令官殺害の動機の1つになりました。

 トランプ政権は1月2日(現地時間)、司令官殺害を発表しました。翌3日にはトランプ大統領自ら、南部フロリダ州で開催されたキリスト教福音派の集会に参加して、ソレイマニ司令官殺害について報告しました。

 以前説明しましたが、トランプ大統領の支持基盤は白人中心の「単一文化連合軍」です。主として白人労働者、退役軍人、キリスト教福音派及び白人至上主義者から構成されています。トランプ大統領は、キリスト教福音派の罷免発言で信徒が離れ、「支持基盤崩壊」になりかねないほど危機的状況に直面していました。


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